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お手本は毛沢東──「ゼロコロナ批判」で、ますます意固地になる習近平

All Is Not Well for Xi

2022年6月13日(月)15時57分
アイク・フライマン(グリーンマントル社インド太平洋担当)、ホアン・イエンチョン(米外交問題評議会研究員)

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ロックダウン解除後、検査を受ける上海の住民(6月8日)ALY SONGーREUTERS

撤回できないゼロコロナ

今の習は身動きが取れない。ゼロコロナ政策の代償が恐ろしく高いことは承知している。だがこの政策の成功に自らの指導力や政治的遺産、そして政権の正統性を結び付けてしまった以上、今さら放棄はできない。それでは失敗を認めることになる。

それに、この政策を打ち切ることには現実的なリスクが伴う。党内で広く周知された調査報告によると、ゼロコロナを解除した場合は高齢者を中心に150万人超の死者が出る可能性がある。そんな事態は受け入れ難い。

しかも投資や消費に関する経済指標は劇的に悪化していた。だから習は5月5日に党政治局の常務委員全員を集め、ゼロコロナ政策への支持を確認させた。会議後の発表文にはこうある。

「ダイナミック・ゼロコロナ政策を揺るぎなく堅持し、この政策をゆがめ、疑い、否定するような言動とは断固として闘う」

習としては、この「揺るぎなき」声明で支持をまとめたいところだった。しかし現実には、ゼロコロナ政策を「ゆがめ、疑い、否定するような言動」が加速された。

まず、李克強の出身母体である共青団(中国共産主義青年団)の関係者が米ウォール・ストリート・ジャーナル紙に、今の李には理性の声があると語った。

そして現に、李は5月の会議で習と対照的なスピーチを行った。習はコロナウイルス根絶の必要性を強調するだけだったが、李は経済問題を語り、コロナには触れなかった。ある参加者に言わせれば、李は「全く異なるアプローチ」を見せたことになる。

また中国の公衆衛生当局者の中にも、身の危険を覚悟でゼロコロナ政策に異議を唱える人がいる。やはり5月に、地方レベルの衛生当局幹部2人が匿名を条件に英医学誌ランセットの取材に応じ、こう語っている。

「今のゼロコロナ政策に異論を唱えれば罰せられる。今の上層部には医療専門家の意見に耳を傾ける者がいない。正直言って屈辱的な状況だ」

もう一方の幹部も、ゼロコロナは「費用対効果が悪い。みんな知っている」と語った。

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