最新記事

中国

増長する習近平が今度は日米韓流「軟弱系」アイドル文化を断罪

Chinese State Media Backs Commentary Supporting Xi’s Crackdown on “Sissy Stars”

2021年9月2日(木)17時32分
アレックス・ルーハンデー
クリス・ウー

女々しく堕落したセレブの一人として問題の社説に取り上げられたウー・イーファン(7月20日、北京で雑誌の表紙に) Tingshu Wang-REUTERS

<「女々しい」男性アイドルや「推し」消費をアメリカや日本の悪しき影響と断罪、国防のために男らしくなければならないとする社説が登場>

中国の国営メディアは、アイドル文化と欧米の影響を厳しく取り締まる習近平(シー・チンピン)国家主席の方針を讃える論説を掲載した。

「根底的な変革が進んでいるのは、誰の目にも明らかだ!」と題したこの論説を書いたのは、元国営メディア主筆の李光滿で、中国版の微信(ウィーチャット)で発表されたという。習政権の規制強化の動きは中国共産党の創設者たちの理念に立ち返る「革命」の一環だと論じる。

「資本市場はもはや資本家たちが一夜にして富を築ける天国ではない」と、李は述べている。「文化市場はもはや女々しいスターたちの天国ではない。報道機関と世論はもはや欧米文化の礼賛に堕することはない」

所得格差の拡大で国民の不満が高まるなか、習は先月、「共同富裕(みんなで豊かになろう)」のスローガンを提唱した。共産党によれば、最近打ち出された一連の規制は、その実現に向けたものだ。

「男らしい文化」で対抗せよと主張

ここに来て中国政府は、未成年のオンラインゲーム利用時間の規制、ビットコインのマイニング(採掘)禁止、国内の大手IT企業に対する規制強化など、立て続けに厳しい措置を打ち出している。中国のセレブ熱もその対象だ。

中国当局は先週、プラットフォーム各社にアイドルやスターの人気ランキングの掲載禁止を通告した。さらに、「飯団」あるいは「飯圏」(飯はファンの意味)と呼ばれるファンコミュニティーが「カオス状態」になっているとして、関連グッズの販売にも規制をかけた。

中国でも、若年層のファンがお気に入りのアーティストの格付けを上げるために「投票権」目当てでグッズを買いまくるなど、「推し消費」が過熱。ライバル同士の飯団がディスり合戦を繰り広げるなど、熱狂的なファンの暴走が李をはじめ保守派の論客のひんしゅくを買っている。

中国の人気スターの一部は、明らかに韓国のKポップや日本やアメリカのアーティストの影響を受けていて、彼らは資本主義の価値観を中国に持ち込む「娘炮(女々しい)」アイドルだ、と李は記す。若者たちがその影響に染まるのを防ぐには、「活力に満ち、健全で、男らしい、強靭な人民中心の文化」を打ち立てなければならない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米司法省、エプスタイン新資料公開 トランプ氏が自家

ワールド

ウクライナ、複数の草案文書準備 代表団協議受けゼレ

ビジネス

米GDP、第3四半期速報値は4.3%増 予想上回る

ビジネス

米CB消費者信頼感、12月は予想下回る 雇用・所得
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者・野村泰紀に聞いた「ファンダメンタルなもの」への情熱
  • 2
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 3
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 4
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 5
    砂浜に被害者の持ち物が...ユダヤ教の祝祭を血で染め…
  • 6
    なぜ人は「過去の失敗」ばかり覚えているのか?――老…
  • 7
    ジョンベネ・ラムジー殺害事件に新展開 父「これま…
  • 8
    楽しい自撮り動画から一転...女性が「凶暴な大型動物…
  • 9
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦…
  • 10
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 9
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 10
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中