最新記事

SNS

妊婦に多数の粉ミルク広告 SNS経由激増のカラクリ

2022年5月7日(土)14時38分
妊婦

米ニューヨークの非営利団体でシニアアナリストとして働くステファニー・ラバータさん(31)は、妊娠6カ月の時に自身のインスタグラムやフェイスブックに時折、粉ミルクの広告が表示されるようになったことに気付いた。フランス南部セートで2016年3月撮影(2022年 ロイター/Regis Duvignau)

米ニューヨークの非営利団体でシニアアナリストとして働くステファニー・ラバータさん(31)は、妊娠6カ月の時に自身のインスタグラムやフェイスブックに時折、粉ミルクの広告が表示されるようになったことに気付いた。

1年後の今は1日に3回から4回で、代表例はレキットベンキーザーの「エンファミル」か、ネスレの「ガーバー・グッドスタート」だ。

「実際、けさも私のフィードにはガーバーの広告が出た。最初は赤ちゃんの笑顔を投稿するコンテストについてで、その後はいろんな種類の粉ミルクや商品が次々に」とラバータさん。

ソーシャルメディアに広告が流れ込むようになって間もないころには突然、オンライン登録した先から乳幼児用ケア用品のセットが届き、その中には粉ミルクも含まれていた。

こうしたマーケティング手法は世界保健機関(WHO)が4月29日に公表した報告書で指摘した、デジタルメディアを通じた「母乳代用品の不適切な販売促進活動」に当たる。

WHOは今年2月、今回の報告公表に先立ち、粉ミルク業界で「強引な」販売戦略が幅広く行われていると警鐘を鳴らす調査結果を発表した。ユーロモニターによると、今年の粉ミルクの売上高は540億ドル余りに増加する見通しだ。

WHOの研究者は、報告で「母乳代用品メーカーは、最も不安定な時期の妊婦や母親に対し、ソーシャルメディアのプラットフォームやインフルエンサー(インターネット上で強い影響力を持つ投稿者)から直接アクセスする手段を買っている」と指摘。

こうした企業はアプリや相談サービス、オンライン登録を利用して個人情報を収集し、その消費者に特化した母乳代用品の広告を母親に送っているという。

ラバータさんの経験は欧米諸国では「ごく普通のこと」だと語るのは、報告書の執筆者の1人であるローレンス・グルマー・ストローン氏。「メーカーはデジタル技術を駆使し、こうした女性のアドレスを手に入れて妊娠していると確認し、販促活動を仕掛けるリストなどに載せている」と説明する。

WHOは1970年代から、粉ミルク業界のマーケティング手法を注意深く監視している。81年には法的拘束力のない企業行動規範を作成し、より健康的な選択肢として、可能であれば新生児には母乳を与えるよう推奨している。もちろん、母乳による育児が不可能な親は多く、粉ミルクは欠かせない。

レキットベンキーザー、ダノン、ネスレなどのメーカーはいずれも母乳を推奨しており、マーケティング担当者が母親に対してできること、できないことを細かく規定した独自の厳格なガイドラインを備えている。

ダノンのデジタルトランスフォーメーション(DX)部門グローバルヘッド、メイベル・ルー氏は、女性がオンラインで「常にコンテンツによる接触を受けている」のは事実だが、この問題はソーシャルメディアプラットフォームのアルゴリズムが、ユーザーに関連すると判断した広告を自動的に表示することが大きな原因だと述べた。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

EXCLUSIVE-米、グリーンランド編入狙い一時

ワールド

トランプ氏、次期FRB議長人選「決定済み」 名前明

ワールド

英首相、トランプ氏と電話会談 北極圏でのロシア抑止

ビジネス

米消費者の再就職見通し過去最低、雇用懸念高まる=N
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:AI兵士の新しい戦争
特集:AI兵士の新しい戦争
2026年1月13日号(1/ 6発売)

ヒューマノイド・ロボット「ファントムMK1」がアメリカの戦場と戦争をこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 2
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 3
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 4
    次々に船に降り立つ兵士たち...米南方軍が「影の船団…
  • 5
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 6
    ベネズエラの二の舞を恐れイランの最高指導者ハメネ…
  • 7
    トランプがベネズエラで大幅に書き換えた「モンロー…
  • 8
    「グリーンランドにはロシアと中国の船がうじゃうじ…
  • 9
    「ショックすぎる...」眉毛サロンで「衝撃的な大失敗…
  • 10
    マドゥロ拘束作戦で暗躍した偵察機「RQ-170」...米空…
  • 1
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチン、その先は袋小路か
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 3
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 4
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 5
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 6
    眠る筋力を覚醒させる技術「ブレーシング」とは?...…
  • 7
    中国軍の挑発に口を閉ざす韓国軍の危うい実態 「沈黙…
  • 8
    次々に船に降り立つ兵士たち...米南方軍が「影の船団…
  • 9
    ベネズエラの二の舞を恐れイランの最高指導者ハメネ…
  • 10
    アメリカ、中国に台湾圧力停止を求める
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 6
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 7
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 8
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 9
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
  • 10
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中