最新記事

ウクライナ

「犯罪の都」オデーサの親ロ派市長がロシアに反旗

Pro-Russia Mayor of Ukraine's 'Crime Capital' Turns His Back on Putin

2022年5月18日(水)15時25分
アンドリュー・スタントン

ロシアの軍事侵攻でプーチン支持をやめたオデーサ市長(4月8日) Igor Tkachenko-REUTERS

<親ロシア派で知られたウクライナの港湾都市オデーサの市長が、今はロシア軍の攻撃に対する守備を固め、徹底抗戦を主張している>

ウクライナの「犯罪の都」として有名なオデーサ(オデッサ)の親ロシア派市長が、ロシアによる侵攻3カ月目にしてウラジーミル・プーチン大統領に反旗を翻した。

オンライン英字新聞「ザ・キーウ(キエフ)・インデペンド」によると、ウクライナ南部の主要な観光地オデーサのゲナディー・トゥルハノフ市長は、有名な親ロシア派であり、汚職疑惑でも知られていた。そしてオデーサは、違法建築が爆発的に増えていることから、同国の元内相にウクライナの「犯罪の都」と呼ばれていた。

だが2月末のロシアによるウクライナ侵攻以来、市長は態度を変え、ウクライナの主権を擁護するようになった。ロシアに好意的だったウクライナ人の間でも、今回の侵攻がいかに嫌われているかを示している。

トゥルハノフは5月17日付の同紙のインタビューで、自分の方向転換を弁明した。ウクライナ第3の都市オデーサの市長になったとき、自分はウクライナ国民に「忠誠を誓った」と彼は言い、それは自分にとって重要なことだと語った。

「私の認識は変わった。残念なことだが」と彼は言った。「ロシアの人々が、私たちウクライナ人をこんなに憎んでいるとは思ってもみなかった。私にはショックだ」

ロシアマフィアともつながり?

オデーサは黒海貿易に重要な役割を果たしており、ウクライナとロシアのどちらにとっても譲れない都市だ。ロシアに占領されれば、ウクライナは世界のサプライチェーンから切り離され、世界中の食糧不足が深刻化することになる。

また、ロシアにとってオデーサには象徴的な重要性もある。旧ソ連時代、第二次大戦中にナチスと戦った住民の勇敢な姿が評価され、オデーサは12の「英雄都市」の一つに指定された。今回のウクライナ侵攻以前は、親ロシア感情の強い都市として知られていた。

ここ数週間、ロシア軍はオデーサに攻撃を続けている。先日も市民に人気のショッピングセンターや娯楽施設が攻撃され、1名が死亡した。5月初めには、市内の寮がミサイルで破壊され、10代の少年が死亡した。

トゥルハノフはロシアのマフィアとつながりがあると非難されている。侵攻の数カ月前から、組織犯罪との関係を疑われ、告発されていたのだ。だがインデペンデント紙のインタビューでは、自分のウクライナを守る強い姿勢を信じない人が多いことに「不快感」を覚えたと語った。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

トランプ氏、雇用統計「不正操作」と主張 労働省統計

ビジネス

労働市場巡る懸念が利下げ支持の理由、FRB高官2人

ワールド

プーチン氏、対ウクライナ姿勢変えず 米制裁期限近づ

ワールド

トランプ氏、「適切な海域」に原潜2隻配備を命令 メ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ関税15%の衝撃
特集:トランプ関税15%の衝撃
2025年8月 5日号(7/29発売)

例外的に低い日本への税率は同盟国への配慮か、ディールの罠か

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    日本人の児童買春ツアーに外務省が異例の警告
  • 3
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿がSNSで話題に、母親は嫌がる娘を「無視」して強行
  • 4
    カムチャツカも東日本もスマトラ島沖も──史上最大級…
  • 5
    【クイズ】2010~20年にかけて、キリスト教徒が「多…
  • 6
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 7
    これはセクハラか、メンタルヘルス問題か?...米ヒー…
  • 8
    一帯に轟く爆発音...空を横切り、ロシア重要施設に突…
  • 9
    枕元に響く「不気味な咀嚼音...」飛び起きた女性が目…
  • 10
    ニューヨークで「レジオネラ症」の感染が拡大...症状…
  • 1
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 2
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 3
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜つくられる
  • 4
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経…
  • 5
    日本人の児童買春ツアーに外務省が異例の警告
  • 6
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
  • 7
    いま玄関に「最悪の来訪者」が...ドアベルカメラから…
  • 8
    中国が強行する「人類史上最大」ダム建設...生態系や…
  • 9
    枕元に響く「不気味な咀嚼音...」飛び起きた女性が目…
  • 10
    【クイズ】1位は韓国...世界で2番目に「出生率が低い…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 3
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 4
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの…
  • 5
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベー…
  • 6
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜…
  • 7
    「細身パンツ」はもう古い...メンズファッションは…
  • 8
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 9
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップ…
  • 10
    ロシアの労働人口減少問題は、「お手上げ状態」と人…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中