最新記事

フィリピン

元大統領の長男ボンボン・マルコスが当確 比大統領選、対立候補支持者のデモで混乱も

2022年5月11日(水)21時30分
大塚智彦
フェルディナンド・マルコス

フィリピン大統領選挙でほぼ勝利を確実なものにしつつあるフェルディナンド・マルコス LISA MARIE DAVID - REUTERS

<アメリカに続き、東南アジアでも国民の分断と対立が進むのか>

5月9日に投票されたフィリピンの大統領選は非公式集計ながら11日現在で、マルコス元大統領の長男で元上院議員のフェルディナンド・マルコス(愛称ボンボン・マルコス)候補が圧倒的多数の得票で当選確実となっている。

同時に行われた副大統領選でもドゥテルテ大統領の長女で南部ミンダナオ島ダバオ市の市長サラ・ドゥテルテ候補者がリードしており、元大統領の長男と現大統領の長女による正副大統領という異例の"2世コンビ政権"誕生が濃厚となっている。

主要野党の統一候補として反ドゥテルテ大統領を掲げて政権交代を狙った副大統領のレニー・ロブレド候補は非公式集計ではボンボン・マルコス候補に大差で負けており、政権交代の実現性は難しくなっている。

選挙戦ではドゥテルテ政権の政策の「継承か転換か」が問われたと同時に、1986年にエドサ革命で打倒されたマルコス元大統領の強権・独裁的政権運営による「暗黒時代」を知る世代を中心とする「反マルコス勢力」と強い指導者を渇望する若い世代、マルコス人気が根強い地方の農村部などからの支持を背景とする「新世代」との選挙戦となった。

ボンボン・マルコス候補は父親の反政府勢力の活動家や学生に対する逮捕、拷問、殺害に加え、反政府メディアへの弾圧といった負のイメージを回避するために選挙運動中は記者会見をほとんど行わず、選挙管理委員会主催の公開討論会も欠席を続け、当選後の経済回復中心にした政策を地方遊説などで直接有権者に訴える選挙戦術に徹してきた。

対中国融和策は維持

ボンボン・マルコス候補は政権掌握後の外交政策に関して詳細をこれまで明らかにはしていないが、米国との関係を維持しつつドゥテルテ政権と同様、中国の経済に依存する融和策を維持するとの見方が有力だ。

中国との間では南シナ海の領有権問題があるが、これもドゥテルテ政権の「建前では譲らないが、本音では現状維持」という軟弱外交を継承する可能性が高い。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

メルセデスが米にEV納入一時停止、新モデルを値下げ

ビジネス

英アーム、内製半導体開発へ投資拡大 7─9月利益見

ワールド

銅に8月1日から50%関税、トランプ氏署名 対象限

ビジネス

米マイクロソフト、4─6月売上高が予想上回る アジ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ関税15%の衝撃
特集:トランプ関税15%の衝撃
2025年8月 5日号(7/29発売)

例外的に低い日本への税率は同盟国への配慮か、ディールの罠か

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 2
    枕元に響く「不気味な咀嚼音...」飛び起きた女性が目にした「驚きの光景」にSNSでは爆笑と共感の嵐
  • 3
    【クイズ】1位は韓国...世界で2番目に「出生率が低い」国はどこ?
  • 4
    いま玄関に「最悪の来訪者」が...ドアベルカメラから…
  • 5
    M8.8の巨大地震、カムチャツカ沖で発生...1952年以来…
  • 6
    一帯に轟く爆発音...空を横切り、ロシア重要施設に突…
  • 7
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
  • 8
    「自衛しなさすぎ...」iPhone利用者は「詐欺に引っか…
  • 9
    日本人の児童買春ツアーに外務省が異例の警告
  • 10
    街中に濁流がなだれ込む...30人以上の死者を出した中…
  • 1
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 2
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの習慣で脳が目覚める「セロ活」生活のすすめ
  • 3
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜つくられる
  • 4
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経…
  • 5
    航空機パイロットはなぜ乗員乗客を道連れに「無理心…
  • 6
    中国が強行する「人類史上最大」ダム建設...生態系や…
  • 7
    「様子がおかしい...」ホテルの窓から見える「不安す…
  • 8
    タイ・カンボジア国境で続く衝突、両国の「軍事力の…
  • 9
    【クイズ】1位は韓国...世界で2番目に「出生率が低い…
  • 10
    中国企業が米水源地そばの土地を取得...飲料水と国家…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 3
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 4
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 5
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの…
  • 6
    「細身パンツ」はもう古い...メンズファッションは…
  • 7
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜…
  • 8
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップ…
  • 9
    ロシアの労働人口減少問題は、「お手上げ状態」と人…
  • 10
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中