最新記事

ウクライナ

東部でロシアの勝利を許せばまたキーウが狙われる──ゼレンスキー

Russia Win in Donbas Would Threaten Kyiv, Influence Course of War: Zelensky

2022年4月18日(月)17時56分
ナタリー・コラロッシ

ドンバス地方にいるのはウクライナ軍の最強部隊、だから失えないとゼレンスキーは言う Marko Djurica-REUTERS

<ウクライナ屈指の軍隊が守るドンバスをロシア軍に突破された後の悪夢のシナリオ>

ロシア軍がウクライナ東部ドンバス地方への攻勢に力を入れる中、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、ドンバスを失うことは首都キーウ(キエフ)にとっても危険なことだと述べた。

17日にCNNが放映したインタビューの中で、ゼレンスキーはドンバスを守ることの重要性を強調した。

「われわれにとり、ドンバスでの戦闘は非常に重要だ。重要である理由はいくつもあるが、何より大きいのは安全の問題だ。ドンバスに配置している部隊はわが国屈指の軍隊だ。大きな部隊だが、ロシアはそれを包囲し打ち倒そうとしている」とゼレンスキーは述べた。「ロシアにそれをさせず、一歩も後退しないことが重要なのはこのためだ。この戦いが戦争全体の行方を左右しかねない」

ゼレンスキーはまた、ロシア軍の攻勢がドンバスで打ち止めになるとは「信じられない」と述べ、もしロシア軍が東部で勝利すれば、再びキーウに向けて進軍するかも知れないと警告した。

ゼレンスキーはウクライナが首都防衛に成功したことに触れ、「われわれがロシア軍を撃退し、ロシア軍がキーウから、北部から、チェルニヒウから、そちらの方向から敗走したという事実は理解している」と述べた。だが、彼はこうも述べた。「だからといって、ロシア軍がドンバスを制圧できたらキーウに向けては進軍してこないとは言えない」

「ロシア軍の士気は低い」と専門家

侵攻の第1段階でウクライナ側の激しい抵抗に遭ったロシア軍はドンバスの制圧を目指している。ウクライナ東部での大規模攻勢に向け、数万人規模の部隊を準備しているところだ。

ドンバスでは、ウクライナからの分離独立とロシアへの編入を目指す親ロシア派武装勢力が活動しており、ロシアは彼らの言う「人民共和国」の独立を承認している。

本誌が取材した専門家らは、前線が絞られたことや開けた地形での戦いになっていることで、現在の戦況はロシアにある程度は有利だと語る。だがその一方で、ロシア軍は今も士気の低下や補給の問題を抱えているという。

「ロシア軍はすでに大きな犠牲を出しており、士気は(開戦した)2月24日と比べて大きく下がっている」と、防衛政策の専門家で外交評議会の非常勤主任研究員であるスティーブン・ビドルは本誌に語った。

「(ウクライナ)東部に投入される部隊の多くは、北部での攻勢に失敗し撤退してきた部隊で、これまでの戦闘で大きな被害を受けている。北部での経験から、戦闘への意気込みは大きく低下しているかも知れない」とビドルは語った。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

メルセデスが米にEV納入一時停止、新モデルを値下げ

ビジネス

英アーム、内製半導体開発へ投資拡大 7─9月利益見

ワールド

銅に8月1日から50%関税、トランプ氏署名 対象限

ビジネス

米マイクロソフト、4─6月売上高が予想上回る アジ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ関税15%の衝撃
特集:トランプ関税15%の衝撃
2025年8月 5日号(7/29発売)

例外的に低い日本への税率は同盟国への配慮か、ディールの罠か

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 2
    枕元に響く「不気味な咀嚼音...」飛び起きた女性が目にした「驚きの光景」にSNSでは爆笑と共感の嵐
  • 3
    【クイズ】1位は韓国...世界で2番目に「出生率が低い」国はどこ?
  • 4
    いま玄関に「最悪の来訪者」が...ドアベルカメラから…
  • 5
    M8.8の巨大地震、カムチャツカ沖で発生...1952年以来…
  • 6
    一帯に轟く爆発音...空を横切り、ロシア重要施設に突…
  • 7
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
  • 8
    「自衛しなさすぎ...」iPhone利用者は「詐欺に引っか…
  • 9
    日本人の児童買春ツアーに外務省が異例の警告
  • 10
    街中に濁流がなだれ込む...30人以上の死者を出した中…
  • 1
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 2
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの習慣で脳が目覚める「セロ活」生活のすすめ
  • 3
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜つくられる
  • 4
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経…
  • 5
    航空機パイロットはなぜ乗員乗客を道連れに「無理心…
  • 6
    中国が強行する「人類史上最大」ダム建設...生態系や…
  • 7
    「様子がおかしい...」ホテルの窓から見える「不安す…
  • 8
    タイ・カンボジア国境で続く衝突、両国の「軍事力の…
  • 9
    【クイズ】1位は韓国...世界で2番目に「出生率が低い…
  • 10
    中国企業が米水源地そばの土地を取得...飲料水と国家…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 3
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 4
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 5
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの…
  • 6
    「細身パンツ」はもう古い...メンズファッションは…
  • 7
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜…
  • 8
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップ…
  • 9
    ロシアの労働人口減少問題は、「お手上げ状態」と人…
  • 10
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中