最新記事

ウクライナ情勢

ウクライナ侵攻反対なのに「白い目」 在外ロシア人の苦難と不安

2022年4月11日(月)09時15分
ウクライナで義勇軍に加わり紛争で死去した、ジョージア人を追悼する人々

侵略に反対するロシア人の国外脱出を支援するNPOによれば、侵攻以来、自国を離れたロシア人は30万人と推定される。だが、誰もが温かく迎えられたわけではない。写真はウクライナで義勇軍に加わり紛争で死去した、ジョージア人を追悼する人々。同国の首都トビリシの空港で3月24日撮影(2022年 ロイター/Irakli Gedenidze)

ウクライナ侵攻が始まって数日後、ロシア・サンクトペテルブルク出身のIT技術者のディミトリさん(23、仮名)は難しい判断を迫られた。ジョージアの首都トビリシに移るか、さもなくば失業するか、だ。

西側諸国による対ロシア制裁を踏まえて、ディミトリさんが勤務する多国籍企業はスタッフに対し、ロシア事業の閉鎖とトビリシへの移転を通告した。

ディミトリさんは本名を伏せることを希望しつつ、「会社からは、トビリシに移るなら支援するが、さもなければ退職するようにと言われた」と語る。

1週間もしないうちに、ディミトリさんはトビリシに向かう機中の人となった。同乗したロシア人らが荷物をまとめた理由は、制裁の影響回避、戦争への怒り、反政権派支持者への弾圧の恐れなどさまざまだった。

侵略に反対するロシア人の国外脱出を支援する非営利団体(NPO)「OKロシアンズ」によれば、ロシア政府の主張するウクライナ非武装化を目的とした「特別軍事作戦」が始まった2月24日以来、自国を離れたロシア人は30万人と推定されるという。

トムソン・ロイター財団では、この推定について独自の裏付けを得ることはできなかった。

OKロシアンズが3月半ばに実施したオンライン調査では、出国者の大多数は技能を持つ若手の専門職で、全体の約3分の1をIT専門家が占めていることが分かった。

母国を離れたロシア人の多くは、ジョージアやトルコ、アルメニアを目指した。ビザなしで入国できる体制で、しかもすでにロシア人コミュニティーがあるからだ。

だが、誰もが温かく迎えられたわけではない。

かつてソビエト連邦を構成する共和国だったジョージアでは、2008年にロシアとの短期間の戦争に敗れ、現在では領土の約5分の1で実効支配を失い、その地域にはロシア軍の進駐を許している。それだけに、ロシア人の流入には疑いの目を向ける者もいる。

車でジョージアに入国するロシア人ドライバーの中には、ナンバープレートの赤・白・青のロシア国旗を隠し、ときにはウクライナ国旗の色である青と黄のステッカーを貼っている者もいる。

ウクライナへの支持

ジョージアは今回の侵攻に関してロシアへの制裁を課していないが、世論調査によれば、ジョージア国民の圧倒的多数はウクライナ支持派だ。

反ロシアを掲げてトビリシで活動する団体「シェーム(恥)・ムーブメント」に参加する人権活動家ノダル・ルカッツェ氏は、ロシアでの抑圧を逃れてくる人々に紛れて、プーチン大統領の支持者がジョージアに入国してくることを懸念しているという。

「残念ながら、プーチン政権の支持者か否かを見分けることはできない」と語るルカッツェ氏は、3月にトビリシで行われたウクライナ支援のデモで拘束された経験がある。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米経済活動、7地区で緩やかな拡大 見通しは全体に楽

ワールド

イラン、CIAに停戦協議打診か イスラエルは米に説

ワールド

ハメネイ師息子モジタバ師、後継有力候補との情報 米

ビジネス

プーチン氏、欧州向けガス供給の即時停止の可能性を示
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプのイラン攻撃
特集:トランプのイラン攻撃
2026年3月10日号(3/ 3発売)

核開発の断念を迫るトランプ政権が攻撃を開始。イランとアメリカの本格戦争は始まるのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    イラン猛反撃、同士討ちまで起きる防空戦はいつまで続くのか
  • 2
    サファリ中の女性に悲劇...ライオンに「くわえ去られる」衝撃映像にネット騒然
  • 3
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビザの壁、会社都合の解雇、帰国後も続く苦境
  • 4
    縫いぐるみが相棒、孤独なサル「パンチくん」がバズ…
  • 5
    「外国人が増え、犯罪は減った」という現実もあるの…
  • 6
    少子化に悩む韓国で出生率回復...昨年過去最大の伸び…
  • 7
    戦術は進化しても戦局が動かない地獄──ロシア・ウク…
  • 8
    「死体を運んでる...」Google Earthで表示される「不…
  • 9
    「イランはどこ?」2000人のアメリカ人が指差した場…
  • 10
    核合意寸前、米国がイラン攻撃に踏み切った理由
  • 1
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからくりとリスク
  • 2
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビザの壁、会社都合の解雇、帰国後も続く苦境
  • 3
    BTS復活...でも、韓国エンタメが「苦境」に陥っている
  • 4
    縫いぐるみが相棒、孤独なサル「パンチくん」がバズ…
  • 5
    中国、4隻目の空母は原子力艦か──世界3番目の原子力…
  • 6
    村瀬心椛は「トップでなければおかしい」...スノボの…
  • 7
    「毎日が人生最後の日」だと思って酒を飲む...84歳医…
  • 8
    少女買春に加え、国家機密の横流しまで...アンドルー…
  • 9
    イラン猛反撃、同士討ちまで起きる防空戦はいつまで…
  • 10
    サファリ中の女性に悲劇...ライオンに「くわえ去られ…
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 3
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 4
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 5
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 6
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 7
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 8
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 9
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 10
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中