最新記事

経済制裁

ウクライナ支援していた在外ロシア人に資金凍結の影響 難民支援の振込も停止の不条理

2022年4月4日(月)11時31分

ロイターが先に報じたところでは、欧州連合(EU)規制当局は一部銀行に対し、EU域内居住者を含むすべてのロシア人およびベラルーシ人顧客の取引を精査するよう指導した。

欧州資産運用会社の一部も、ロシア人顧客との新規取引を中止するなどして、制裁の火の粉を浴びないよう模索している。スイスの銀行大手UBSのラルフ・ハマーズ最高経営責任者(CEO)は、実質的にロシアのパスポート保有者全員が準制裁対象になったと述べた。

ロンドンに住むロシアの文筆家、Grigory Chkhartishvili氏は、英バークレイズ銀行を通じてウクライナ難民支援基金に資金を振り込むことができた。同氏の姓はジョージア語だ。

しかしロシア姓を持つ妻は、同じ基金に振り込みをしようとして同行に阻止されたという。同行は妻に対面での面会を求めた。

「私の振込額の方が10倍大きかったが、問題はなかった。これが今の雰囲気だ」とChkhartishvili氏は言う。

妻はロイターに対し、バークレイズ銀行に電話して事情を説明した翌日に送金が可能になったと明かした。

30年間ロンドンに住むロシアの石油・銀行実業家は、ロシアの侵攻による「巻き添え被害者」になったと話す。自身は制裁リストに載っていないものの、制裁拡大を懸念し、欧州にある資産の売却を検討している。「現金で生きていく必要がある。なるべく静かにしていなければならない」と語った。

嫌ロシア感情

ロンドンでレストランを経営するチクバルキンさんの場合、フォキナさんと共にプーチン氏と戦争に反対し、ウクライナ支援を叫んできたため、2人のビジネスが嫌ロシア感情の標的になることは免れている。

しかし、2人が経営するミシュランの星付きレストラン「ハイデ」は、ロシアのウクライナ侵攻から2週間たったころ、グーグルレビューで珍しく「星1つ」という最低の評価が1件付いた。フォキナさんの助手が明らかにした。レビュー総数は1767件で、平均点は4.5だ。

星1つのレビューには「経営者はロシア人」という短いコメントが付いていた。このレビューはその後削除された。

「チャイコフスキーのコンサートに行くのをやめたとか、人々がロシア食品店を襲っているとかいったニュースを目にする。ここは2022年のロンドンだ。あっという間にこうなってしまうとは」とフォキナさんは嘆いた。

(Kirstin Ridley記者、 Brenna Hughes Neghaiwi記者、 Danielle Kaye記者)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

トランプ氏が対中追加関税を表明、身構える米小売業者

ワールド

米中首脳、予定通り会談方針 対立激化も事務レベル協

ビジネス

英消費支出、9月は4カ月ぶりの低い伸び 予算案前に

ワールド

ガザ情勢、人質解放と停戦実現を心から歓迎=林官房長
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:中国EVと未来戦争
特集:中国EVと未来戦争
2025年10月14日号(10/ 7発売)

バッテリーやセンサーなど電気自動車の技術で今や世界をリードする中国が、戦争でもアメリカに勝つ日

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以外の「2つの隠れた要因」が代謝を狂わせていた
  • 2
    中国人が便利な「調理済み食品」を嫌うトホホな理由とは?
  • 3
    メーガン妃の動画が「無神経」すぎる...ダイアナ妃をめぐる大論争に発展
  • 4
    車道を一人「さまよう男児」、発見した運転手の「勇…
  • 5
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 6
    筋肉が目覚める「6つの動作」とは?...スピードを制…
  • 7
    連立離脱の公明党が高市自民党に感じた「かつてない…
  • 8
    1歳の息子の様子が「何かおかしい...」 母親が動画を…
  • 9
    ウィリアムとキャサリン、結婚前の「最高すぎる関係…
  • 10
    あなたの言葉遣い、「AI語」になっていませんか?...…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな飼い主との「イケイケなダンス」姿に涙と感動の声
  • 3
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以外の「2つの隠れた要因」が代謝を狂わせていた
  • 4
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
  • 5
    中国人が便利な「調理済み食品」を嫌うトホホな理由…
  • 6
    ロシア「影の船団」が動く──拿捕されたタンカーが示…
  • 7
    ベゾス妻 vs C・ロナウド婚約者、バチバチ「指輪対決…
  • 8
    ウクライナの英雄、ロシアの難敵──アゾフ旅団はなぜ…
  • 9
    時代に逆行するトランプのエネルギー政策が、アメリ…
  • 10
    トイレ練習中の2歳の娘が「被疑者」に...検察官の女…
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 3
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 4
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に.…
  • 5
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 6
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 7
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 8
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 9
    数千円で買った中古PCが「宝箱」だった...起動して分…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中