最新記事

韓国

激戦の韓国大統領選、敗北した李在明氏の出国禁止を要請する国民請願も

2022年3月15日(火)17時15分
佐々木和義

激戦を制した尹錫悦(ユン・ソクヨル)候補  Lee Jin-man/Pool via REUTERS

<3月9日に投票が行われた韓国大統領選挙。稀に見る大接戦だったが、両候補の得票差を上回る
票が無効になるなど、混乱が見られた......>

ソウル中央地検は3月9日に実施された第20代韓国大統領選挙の中央選挙管理委員長の捜査に着手した。

5日と6日の事前投票で、新型コロナ感染者と自宅隔離者の投票用紙を投票箱ではなく紙の箱や袋などに入れるなど秘密選挙の原則を破ったという指摘を受けている。

「法治主義是正行動連帯」などの市民団体が、盧貞姫(ノ・ジョンヒ)中央選挙管理委員長を公職選挙法違反・公務執行妨害・職権乱用などで告発し、訴えを受けたソウル中央地検が捜査に乗り出した。

両候補の得票差を上回る30万7542票が無効票に

今回の大統領選挙で野党・国民の力の尹錫悦(ユン・ソクヨル)候補は1639万4815票、与党・共に民主党の李在明(イ・ジェミョン)候補は1614万7738票を得票し、0.73ポイント差となる24万7077票の僅差で尹候補が当選したが、得票差を上回る30万7542票が無効票となった。

3月3日、国民の力の尹錫悦候補と国民の党の安哲秀(アン・チョルス)候補が野党候補の一本化を宣言して安候補が辞退した。

2月23日から28日に行われた在外選挙で安氏に投じられた票は無効となった。また、3月4日と5日に実施された事前投票(期日前投票)で投票所が印刷した投票用紙は安氏の名前の横に「辞退」と表示されたが、印刷を終えていた本投票用紙に「辞退」の表示がなかったことから安氏への投票が少なくなかったと見られている。

新型コロナ感染者・隔離者の対応で混乱

事前投票時の新型コロナウイルスの感染者と隔離者への対応も問題視されている。有権者の約36.93%に相当する1632万3602人が事前投票を済ませた。選管は事前投票を行う感染者と隔離者を投票所1箇所あたり20人台と予想した。感染者や隔離者の票は3月5日午後5時から6時の間に屋外に急造した臨時記票台で記票した投票用紙を立会人が受け取って投票箱に投函する方式を導入した。

ところが多くの投票所に100人近くが集まり、混乱に陥った。段ボール箱やプラスチックのかごで感染者の投票用紙を回収した投票所や、なかには自治体の指定ごみ袋で回収した投票所もあったという。また、ソウル恩平区の投票所では3人の有権者が記票済みの投票用紙を受け取り、1時間以上の屋外待機で倒れた感染者も出た。

本投票日にも問題が起きた。京畿道烏山市など複数の投票所で、有権者が投票を拒絶されたのだ。選挙人名簿に事前投票を終えたと誤って記載されていたという。一方、京畿道富川市の投票所では1人の有権者に2枚の投票用紙が渡された。有権者が2枚とも同じ候補者を記載したため、市選管は1枚を無効票、1枚を正常な投票として処理した。

江原道春川市では、事前投票を済ませた男性に本投票の投票用紙が交付された。男性は「投票所で身分証を提示したら投票用紙を渡された」と話している。また、身分証の写真より太っているとして、投票を拒絶された人もいた。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

米ISM製造業景気指数、4月48.7 関税の影響で

ワールド

トランプ氏、ウォルツ大統領補佐官解任へ=関係筋

ビジネス

物言う株主サード・ポイント、USスチール株保有 日

ビジネス

マクドナルド、世界の四半期既存店売上高が予想外の減
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 5
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 6
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 7
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 8
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 9
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 10
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中