最新記事

ウクライナ情勢

プーチン、ゼレンスキー双方がのめる和平合意案、5つの条件

HOW TO END THE WAR

2022年3月17日(木)11時40分
フレッド・カプラン(スレート誌コラムニスト)

magSR20220317howtoend-2.jpg

ロシアの猛爆撃を受けたマリウポリで犠牲者を集団墓地に埋葬するボランティア(3月9日) AP/AFLO

■2:ウクライナがクリミア半島をロシア領として認める

一見したところ承服し難いかもしれないが、これは現状を受け入れる現実的な案だ。

ロシアは2014年に、1発の銃弾も発射せずにクリミアを併合した。もともと住民のほとんどがロシア系で、自分たちをロシア人と見なしていたからだ。

これはクリミアが1954年に、ソ連の当時の最高指導者であるニキータ・フルシチョフ共産党第1書記の独断で、ロシア共和国からウクライナ共和国に割譲されたからだ。

従ってロシアに戻してもいいだろう。

■3:ロシア軍がウクライナから完全撤退する

ロシア軍は、国境のロシア側に退くだけでなく、拠点とする基地まで引き揚げなければならない(機甲部隊の一部は何百キロも離れた基地から運ばれてきた)。

これは厳格なスケジュールに沿って実行される必要がある。

もし、ロシアがそれを守らなければ、ウクライナはNATO加盟申請を再開できる。その状況では、NATO側も直ちに加盟を認めるかもしれない。

■4:ウクライナ東部で住民投票が実施される

東部のドンバス地方を構成するドネツクとルガンスクが、自治共和国としてウクライナにとどまるか、ロシアに併合されるかを問う自由かつ公平な住民投票を行う。その結果がどうあれ、この地方は武装解除地帯となり、必要なら国連の平和維持部隊が常駐する。

この地方の扱いは複雑な問題だ。ドンバスはウクライナで最大かつ最も人口の多い工業地帯。そこを手放すのは、領土的一体性の維持というウクライナの理念を曲げることにもなり、クリミアを失うよりも痛手は大きい。

ただ、この地方では過去8年間、政府軍と親ロシア派組織の間で激しい戦闘が繰り広げられ、約1万4000人が命を落とした。

プーチンはウクライナ侵攻前に、ドネツクとルガンスクを独立共和国として承認し、そこに住むロシア系住民をウクライナの虐殺から守るという口実でロシア兵を送り込んだ。

従って住民投票により、ドンバス地方がロシアに併合されれば、プーチンにとっては大勝利だ。たとえウクライナ側に残っても、両自治共和国は親ロシア派の代表を中央政府に送り込み、ウクライナの政治に大きな影響を及ぼすことができる。

ウクライナの人々が西側に接近したいなら(今回の侵攻後はなおさらだろう)、ドンバスはロシアにくれてやるのが一番いいだろう。

【関連記事】
ロシア軍の実力は「起きなかったこと」に注目すれば分かる

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ネクスペリア中国部門「在庫十分」、親会社のウエハー

ワールド

トランプ氏、ナイジェリアでの軍事行動を警告 キリス

ワールド

シリア暫定大統領、ワシントンを訪問へ=米特使

ビジネス

伝統的に好調な11月入り、130社が決算発表へ=今
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 3
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った「意外な姿」に大きな注目、なぜこんな格好を?
  • 4
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 5
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 6
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 7
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 8
    筋肉はなぜ「伸ばしながら鍛える」のか?...「関節ト…
  • 9
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 10
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 6
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 7
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 8
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 9
    中国レアアース輸出規制強化...代替調達先に浮上した…
  • 10
    庭掃除の直後の「信じられない光景」に、家主は大シ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中