最新記事

認知症

認知症の世界を「実感」できる本、『認知症世界の歩き方』から見えること

2022年2月25日(金)17時30分
flier編集部
認知症

sh22-iStock

<認知症のある人が実際に経験している「世界」を、旅行記風に体感できる本として話題を呼んだ『認知症世界の歩き方』の著者、筧裕介氏インタビュー>

※このインタビュー記事は、本の要約サービス「flier(フライヤー)」からの転載です。

2025年には後期高齢者の人口が約2,200万人にのぼり、国民の4人に1人が75歳以上になることが見込まれています。それに伴い、認知症のある方が増えることが予想され、認知症はより身近な社会課題になっていくといえます。

認知症のある方が経験する出来事を、旅のスケッチと旅行記の形式にまとめ、誰でも楽しみながら学ぶことができる――。そんな画期的な本、『認知症世界の歩き方』(ライツ社)が大きな反響を呼び、読者が選ぶビジネス書グランプリ2022 リベラルアーツ部門を受賞しました。

著者は、「ソーシャルデザイン」の第一人者であり、NPO法人issue+design代表理事を務める筧裕介さん。本書を執筆した背景にはどんな課題意識があったのでしょうか?

「本人の視点」で認知症世界を体験できる本をめざした

── 読者が選ぶビジネス書グランプリ2022 リベラルアーツ部門の受賞、おめでとうございます! 受賞の感想を教えていただけますか。

大変光栄です。認知症に関する知識が日本人にとっての教養、リベラルアーツというべき知となるよう、今後も精進していきたいと思いでいっぱいです。

── 本書は、認知症のある方、その予備軍とされる方、認知症のある方のご家族、介護・医療に携わる方など、さまざまな読者の方々に読まれています。大きく支持されている理由は何だとお考えですか。

認知症のある方本人の視点にこだわり抜いたこと、お子さんからご高齢の方まで、多様な方に理解していただけるようなわかりやすいデザインが評価していただけたのではと思っています。

── 筧さんが『認知症世界の歩き方』を執筆されたきっかけは何でしたか。

もともと、医療やまちづくりなどの社会課題をデザインの力で解決しようとissue+designというデザインチームで活動しており、認知症にも関心を抱いていました。2018年から認知症未来共創ハブという団体に創立メンバーとして参加し、「認知症とともによりよく生きる未来」をつくるために、何ができるかを考えてきました。

認知症は身近な社会課題になりつつありますが、そもそも認知症のある方が普段どういった困りごとを抱えているのかはあまり知られていません。また、そうしたことを「ご本人」の視点から紹介した情報や研究成果が、日本でも海外でも見当たらないことに気づきました。

そこでまずは認知症のある方の声を届けようと、ご本人へのインタビューを行い、現在まで100名に及びます。リサーチを重ねるなかで見えてきた「困りごと」を、「記憶のトラブル」「五感のトラブル」「時間・空間のトラブル」「注意・手続きのトラブル」という4つの領域・44種類に分類し、イラストとともに構造化、可視化していきました。

220224fl_ikk02.jpg

『認知症世界の歩き方』
 著者:筧裕介
 出版社:ライツ社
 flierで要約を読む

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

EXCLUSIVE-チャットGPTなどAIモデルで

ビジネス

円安、輸入物価落ち着くとの前提弱める可能性=植田日

ワールド

中国製EVの氾濫阻止へ、欧州委員長が措置必要と表明

ワールド

ジョージア、デモ主催者を非難 「暴力で権力奪取画策
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岸田のホンネ
特集:岸田のホンネ
2024年5月14日号(5/ 8発売)

金正恩会談、台湾有事、円安・インフレの出口......岸田首相がニューズウィーク単独取材で語った「次の日本」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 2

    「自然は残酷だ...」動物園でクマがカモの親子を捕食...止めようと叫ぶ子どもたち

  • 3

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 4

    「真の脅威」は中国の大きすぎる「その野心」

  • 5

    いま買うべきは日本株か、アメリカ株か? 4つの「グ…

  • 6

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 7

    デモを強制排除した米名門コロンビア大学の無分別...…

  • 8

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 9

    イギリスの不法入国者「ルワンダ強制移送計画」に非…

  • 10

    中国軍機がオーストラリア軍ヘリを妨害 豪国防相「…

  • 1

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 2

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 3

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 4

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 5

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 6

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 7

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 8

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 9

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 10

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 10

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中