最新記事

ウクライナ危機

渦中のウクライナ大統領が「まだ大丈夫」と、アメリカに不満顔の理由

Kyiv's Domestic Worries

2022年2月14日(月)17時35分
ウラジスラフ・ダビドゾン(ジャーナリスト)
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領

緊張が高まるなかでゼレンスキーは国内世論と外圧の板挟み状態に GLEB GARANICHーREUTERS

<ロシアの侵攻は間近だとバイデン政権は声高に警告するが、支援を受ける当のゼレンスキー大統領は同盟国と異なるスタンスを取っている>

ロシアとウクライナの緊張関係が急速に悪化し始めて3カ月余り。ロシアは今も、ウクライナとの国境の北・東・南の3面に配置した兵力を増強し続けている。

いくらなんでも北京冬季五輪の閉幕までは、軍事侵攻はないはずだと、ウクライナ政府と欧米情報機関の一部はみる。

だが、2014年から続くロシアによるウクライナ東部とクリミア半島への侵攻は、いつ大規模な戦争に発展しても不思議ではない。

そんな警戒論を誰よりも強く発してきたのが、アメリカだ。

確かにソーシャルメディアには、ウクライナ国境に向かうロシアの大型軍事車両の動画が次々投稿されているし、ウクライナの北西部に位置し、強硬な親ロ政権が存在するベラルーシは、2月中に大規模な軍事演習を予定している。

だが興味深いことに、当事者であるウクライナ政府は、アメリカなどの同盟国と異なるスタンスを取っている。

ウクライナにとって、こうした戦争ありきの主張は不要に事を荒立てるものであり、既に壊滅状態にある国内経済にさらなる大打撃を与える恐れがある。

だから、ウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、過激化する議論を沈静化しようとしてきた。

ゼレンスキーが今回の危機について、初めて国民に向けて演説をしたのは、1月19日にアントニー・ブリンケン米国務長官と会談した後のこと。

しかも、ロシアの大規模な攻撃が迫っているというジョー・バイデン米大統領の発言について、「キエフに住んでいるのは私だ」と述べて、バイデンら米政府幹部は現状を分かっていないと示唆した。

ウクライナの情報機関も、同じように冷静な対応を呼び掛けている。

国家安全保障防衛会議(NSDC)のオレクシー・ダニーロフ長官は最近、人気トーク番組で、確かに懸念すべき深刻な理由は存在するが、パニックを起こすほどではないと説明した。

ダニーロフはAP通信にも、「全世界が気付くような準備には、3~7日かかるだろう。まだその状況にはない。われわれは現状を明確に把握しており、それに対して粛々と準備を進めている」と語った。

ウクライナ市民の間では、アメリカが「シュタインマイヤー案」の受け入れを強いている(と彼らは感じている)ことへの警戒感もある。

不平等合意への不信感

シュタインマイヤー案とは、2014年に調印された「ミンスク和平合意」に関連して、フランクワルター・シュタインマイヤー独外相(現大統領)が提案した実施プロセスだ。

親ロシア武装勢力の支配下にある東部ドンバス地方の扱いについて、ロシアとウクライナが取るべき措置を示した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イスラエルがイランに新たな攻撃、「米と交渉せず」と

ワールド

米戦闘機が墜落、クウェートが誤射 ドローン攻撃続く

ビジネス

英住宅ローン承認件数、1月は2年ぶり低水準 予想外

ワールド

IAEA、核施設に「被害の兆候なし」 ナタンツ攻撃
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本人が知らない AI金融の最前線
特集:日本人が知らない AI金融の最前線
2026年3月 3日号(2/25発売)

フィンテックの進化と普及で、金融はもっと高速に、もっとカジュアルに

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    BTS復活...でも、韓国エンタメが「苦境」に陥っている
  • 2
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからくりとリスク
  • 3
    「毎日が人生最後の日」だと思って酒を飲む...84歳医師が語る心優先の健康法
  • 4
    ドバイの空港・ホテルに被害 イランが湾岸諸国に報…
  • 5
    「若い連中は私を知らない」...大ヒット映画音楽の作…
  • 6
    「本当にテイラー?」「メイクの力が大きい...」テイ…
  • 7
    「高市大勝」に中国人が見せた意外な反応
  • 8
    【銘柄】「三菱重工業」の株価上昇はどこまで続く...…
  • 9
    【銘柄】「ファナック」は新時代の主役か...フィジカ…
  • 10
    米・イスラエルの「イラン攻撃」受け、航空各社が中…
  • 1
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医師がすすめる意外な健康習慣
  • 2
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからくりとリスク
  • 3
    村瀬心椛は「トップでなければおかしい」...スノボの謎判定に「怒りの鉄拳」、木俣椋真の1980には「ぼやき」も
  • 4
    BTS復活...でも、韓国エンタメが「苦境」に陥っている
  • 5
    中国、4隻目の空母は原子力艦か──世界3番目の原子力…
  • 6
    少女買春に加え、国家機密の横流しまで...アンドルー…
  • 7
    米国の中国依存が低下、台湾からの輸入が上回る
  • 8
    中国で今まで発見されたことがないような恐竜の化石…
  • 9
    「毎日が人生最後の日」だと思って酒を飲む...84歳医…
  • 10
    「若い連中は私を知らない」...大ヒット映画音楽の作…
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 3
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 4
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 5
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 6
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 7
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 8
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 9
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 10
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中