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チャールズ皇太子【特別寄稿】2人の息子の行動を誇りに思う...気候変動に戦時の危機感を

THE ROYAL PLAN

2022年2月11日(金)16時47分
チャールズ英皇太子
英ロイヤルファミリー

Jack Hill/Pool via REUTERS

<孫の世代にクリーンな地球を残すため、私たちは行動を起こさなければならない。環境問題に精力的に取り組む英チャールズ皇太子の提言>

キューバ危機により世界が核戦争の瀬戸際に立たされてから1年もたたない1963年6月。ジョン・F・ケネディ米大統領は、ワシントンにあるアメリカン大学の卒業式で演説を行った。

恒久平和の実現はなおも遠い夢だったが、ケネディは演説の中で戦争は避けられないとする考えを「危険で敗北主義的な思い込み」と退け、「人類は制御できない力に支配されており」「滅びる運命にある」という見方に反論した。

その上で世界平和への協力を呼び掛け、次のように力強く宣言した。「私たちの問題は人の手でつくられた問題ですから、人の手で解決できます。人は自分が望む限り、どこまでも大きくなることができるのです。人類の運命に関わる問題で、人類の力が及ばないものはありません。人間の理性と精神は、解決できそうにない難題を何度も解決してきました。今回もそうだと信じています」

ケネディの呼び掛けは今の時代にも響くが、問題は変わった。今の私たちは未来の世代によりクリーンで安全で健やかな地球を残すため、気候変動と戦っている。世界は再び瀬戸際に立たされており、勝利を収めるには戦時の危機感を持って、人々を動かさなければならない。

60年前、亡き父(フィリップ殿下)は人類が地球に与えるダメージを憂慮し、世界自然保護基金(WWF)の創設に関わった。そのおよそ10年後、私は初めて公の場で環境問題について語ったが、杞憂と考える人は少なくなかった。そうした見方は徐々に変わってきたが、危機意識は今も不十分だ。

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地球環境を守るために全ての人が行動を起こすことが求められている PAUL SOUDERS/GETTY IMAGES

行動を起こした息子たちを誇りに思う

気候変動の脅威を認識し行動を起こした息子たちを、私は父として誇りに思う。長男ウィリアムは地球の回復を促すため、革新的な取り組みや技術に投資を行う環境賞「アースショット賞」を設立した。

次男のヘンリーは気候変動の打撃をとりわけアフリカに絡めて訴え、自身の慈善団体で「ネットゼロ(温室効果ガスの排出量を実質ゼロに抑えること)」を目指すと誓った。

気候変動に人間の活動が関係していることを否定する声は、世界中で減っている。しかし「制御できない力に支配されて」いる私たちに環境破壊を止め、流れを逆転させることはできないと悲観する人は、あまりに多い。

力を制御できることは科学が示している。ただし制御するには、意識的に行動を起こさなければならない。

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