最新記事

旅客機

最後のエアバスA380、空に残したメッセージ

2022年2月3日(木)13時45分
青葉やまと

愛されつつも、時代の変化に追いつけず

生産終了に至った背景には、航空各社の戦略の変化がある。A380の開発当初、各社はハブ&スポーク構想を戦略の柱としていた。世界の主要なハブ空港同士を巨大な旅客機で結び、そこから各地方の空港へと小型機で分散させる方式だ。しかし近年ではLCC(格安航空会社)などの台頭もあり、地方の空港同士を比較的小型の機体で結ぶポイント・ツー・ポイント方式のニーズが高まりつつある。

ニュージーランド・ヘラルド紙は、「16年間に252機を生産したエアバス社は今、スーパージャンボの時代は終わったと語る」と報じている。さらに同紙は、「航空各社は小型で燃費に優れた航空機、そして運航スケジュールの柔軟性を求めており、853名乗りの飛行機の時代は終わりを告げた」とも分析している。

なお、853名は全席エコノミー編成を想定した理論上の数字であり、実際の席数はこれを下回る。ファーストクラスを廃止しても、これまで実現した最大席数は615席に留まる。

カタール航空のアクバル・アル=バーキルCEOは11月、シンプル・フライング誌に対し、「2002年の立ち上げ当時はよかった。しかし残念だが、燃料の高騰と設計ミスを受けて我々は、大きな間違いだと考えている」と厳しい意見を語っている。パンデミックによる旅客需要の減少も、大型機への逆風となった。

一方、12月にはカタール航空はA350の塗装問題を受け、A380を代打に起用する方針を打ち出した。これとは別にシンガポール航空はインド路線などにおいて、年末年始の需要に対応すべくA380を復帰させた。生産が終わっても、一線で活躍する機会はまだまだ大いにありそうだ。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

再送-中国製造業PMI、10月は50.6に低下 予

ワールド

イスラエル、レバノンにヒズボラ武装解除要請 失敗な

ワールド

AIを国際公共財に、習氏が国際機関構想アピール A

ワールド

トランプ氏、エヌビディアの最先端半導体「中国など他
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「今年注目の旅行先」、1位は米ビッグスカイ
  • 3
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った「意外な姿」に大きな注目、なぜこんな格好を?
  • 4
    米沿岸に頻出する「海中UFO」──物理法則で説明がつか…
  • 5
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 6
    筋肉はなぜ「伸ばしながら鍛える」のか?...「関節ト…
  • 7
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 8
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 9
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 10
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 6
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 7
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 8
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 9
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 10
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中