最新記事

アメリカ社会

選管担当者への恐喝、「言論の自由」が壁に トランプ派の脅迫に法改正で対応へ

2022年1月31日(月)17時05分

コンドース氏はあるインタビューの中で、この脅迫者は州法のもとでは責任を問われないだろうと語った。すでに警察・検察は発信者の過去のメッセージを検証し、言論の自由のもとで保護されると判断していた。

コンドース氏は失望し、州議会議員6人に文書を送り、連邦法との整合性を高めるよう州法を調整し、もっと明確な訴追基準を定めるような立法措置を検討するよう促した。

連邦政府当局者は、こうした脅迫行為は深刻であり、調査に値するものと判断した。バーモント州の法執行当局者2人によれば、ロイターが10月にあった脅迫についてバーモント州当局に質問した後、連邦捜査局(FBI)がこの件の調査を始めたという。

コンドース氏は、自分が議員らに送ったメールには、脅迫行為が暴力へエスカレートしかねないと懸念する思いを込めたと語る。「私たちが今どんな世界にいるのかという認識、そして何らかの行動を取らなければという理解を示すものでもある」と同氏は言う。

脅迫か、言論の自由か

バーモントなどの州で提出された法案は、合衆国憲法がすべての米国民に保障している言論の自由の保護を変更するものではない。バーモント州の法案の賛同者はその立法意図について、州法を連邦の基準に一致させ、暴力をにおわせる脅迫を訴追することを容易にすることだと述べている。

バーモント州で起草された法案は、犯罪となる脅迫行為の定義を明確化し、訴追に向けた複数のハードルを排除するもので、特定個人を標的とする脅迫に限定する要件や、脅迫に含まれる暴力行為を実現する手段・能力を被疑者が保持していることの立証義務が緩和される。もう1つの措置は、公務員への脅迫に対して現在より重い刑罰を与えることになる。

法案作成にあたり議員への助言を行った同州のローリー・ティボー弁護士は、法案は「私たちの自由を損なうものではない」と語る。

バーモント州では、こうしたバランスはデリケートな問題だ。何しろ同州には250年近く前、つまり合衆国憲法制定より10年以上前に、広範な自由言論の保護を成文化した歴史があるからだ。

1777年、英国から独立したバーモント共和国は「言論の自由、意見を文書として公表する自由の権利」を保障する憲法を制定した。この文言は今も同州の憲法に残っている。1798年には、州選出の下院議員であるマシュー・ライオンが、ジョン・アダムズ大統領を批判したことにより「外国人・治安諸法」により収監されながらも再選された。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ECB理事会後のラガルド総裁発言要旨

ビジネス

ECBが金利据え置き、4会合連続 インフレ見通し一

ビジネス

米新規失業保険申請件数、1.3万件減の22万400

ビジネス

米11月CPI、前年比2.7%上昇 セールで伸び鈍
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末路が発覚...プーチンは保護したのにこの仕打ち
  • 2
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開したAI生成のクリスマス広告に批判殺到
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 5
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 6
    9歳の娘が「一晩で別人に」...母娘が送った「地獄の…
  • 7
    円安と円高、日本経済に有利なのはどっち?
  • 8
    おこめ券、なぜここまで評判悪い? 「利益誘導」「ム…
  • 9
    ゆっくりと傾いて、崩壊は一瞬...高さ35mの「自由の…
  • 10
    欧米諸国とは全く様相が異なる、日本・韓国の男女別…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 5
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 6
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 7
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 8
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 9
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 10
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中