ミャンマー軍政との関係見直し求める声高まる 会計検査機関や日本政府も対象に
ミャンマー軍からの留学生を受け入れてきた防衛大学の卒業式 KIYOSHI OTA - REUTERS
<私たちとは関係のない遠い国の話だとは言えない関係がある>
軍政による強権支配、人権侵害が続くミャンマーで、反軍政の立場をとる国民や抵抗組織などから国際的な会計監査機関に対して軍との関係を見直すよう要求がでており、こうした要求は日本政府にも向けられていることが国際的な人権団体などの指摘で明らかになっている。
市民や反軍政抵抗組織の人々にとっては、ミャンマー軍との関係維持は軍政の「容認」「正当化」を意味する。軍や軍の関係する組織との関係を見直し、関係を断つことが軍政を孤化させせ国民を支持することに結び付くと、現地の反軍独立系メディア「ミャンマー・ナウ」は、19日国際人権団体「ヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW) 担当者の寄稿を掲載し伝えた。
人権団体「ジャスティス・フォー・ミャンマー(JFM)」は1月19日、東南アジア諸国連合最高会計検査機関(ASEANSAI)と最高会計検査機関国際組織(INTOSAI)、さらにノルウェーとスウェーデンの監査機関が、ミャンマーの会計検査機関を「ミャンマー代表」としていると指摘した。
ミャンマー会計検査機関は軍政支配下の組織であることから、JFEは軍政と関係が深い組織との関係見直しを求める声明を出したと見られる。
批判の目は日本にも
またこうした矛先は日本政府にも向けられている。
「ヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)」は2021年12月、日本の防衛大学がミャンマー軍士官候補生を留学生として受け入れていることを中止するよう求める声明を出している。
HRWによるとミャンマー軍から8人の士官候補生が防大に留学しており、このうち2人は2021年2月1日のクーデター発生後の留学であるという防衛省からの情報も伝えている。ミャンマーからの留学生受け入れは2015年から始まっているという。
防大はかねてからミャンマーの他に韓国やモンゴル、インドネシア、カンボジア、タイ、フィリピン、マレーシアなどアジア各国を中心に士官候補生などを留学生として受け入れている。
こうした留学生が防大を卒業して帰国、各国の軍で昇進して活躍することで日本との軍事的友好関係に資するとして積極的に推進している経緯がある。
日本政府はクーデター発生直後に重大な懸念を表明し「暴力の停止」や「拘束されたアウン・サン・スー・チー最高顧問兼外相やウィン・ミン大統領らの即時釈放」を軍政に求めた。3月18日には同盟国との共同声明で軍による「非武装の民間人への武力行使」を非難した。
「ミャンマー・ナウ」は、こうした事実がある一方で、留学生をいまだに受け入れていることが「クーデターを非難する日本政府の姿勢と"矛盾"するだけでなく、人道に対する罪や人権侵害への軍の責任を問う国際社会の努力を損なっている」と伝えている。
日本政府の"矛盾"を指摘
こうした独立系メディアによる見解を「見当違いである」とみる向きもあるだろうが、ほぼ毎日軍と武装市民や少数民族の武装勢力の戦闘が行われているミャンマーは、武装市民などだけでなく、一般市民も軍により殺害されている過酷な状況にあり、日本によるミャンマー軍兵士の受け入れという事実は受け入れることが難しいという側面がある。