最新記事
ヘルス

仰向けで、ひざ裏がベッドから浮く人は注意...「ひざの痛み」をもたらす「圧迫」

2022年1月22日(土)12時23分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

こうした状態になると、体にはどのような変化が起こるでしょうか。ひざを伸ばしきらずにいると、ひざの表側がストレッチされ、ひざのお皿を支点として、二つの力が発生するのです。一つは、大腿四頭筋にかかる脚のつけ根方向への力です。そして、もう一つが、膝蓋靭帯にかかる足首方向への力です。

さて、このとき、私の頭の中にあることばが浮かびました。それは、中学時代に理科の授業で習った「力の合成」ということばです。

物体に二つの力が加わったとき、力の合成が起こり、別の力が生まれます。この別の力を「合力」といいます。合力は、二つの力のベクトル(大きさと向きを持つ量)で形成する平行四辺形の対角線上に発生します。

ひざには、ひざのお皿から脚のつけ根方向へ向かう力と、ひざのお皿から足首方向へ向かう二つの力が加わります。すると、この二つの力のベクトルが形成する平行四辺形の対角線上に合力が生まれます。

この合力のベクトルに注目してください。ひざのお皿が大腿骨に向かって圧迫するように押されているのがわかります。そうです。この力の作用によって、膝蓋大腿関節に炎症が起こり、ひざ痛が起こっているのです。

また、大腿骨に向かって圧迫しているということは、大腿骨と脛骨で構成されるひざ関節にも影響を与えていることが考えられます。

ということは、もともとの炎症の起こっている箇所が、ひざ関節であるか、膝蓋大腿関節であるかにかかわらず、まずはひざのお皿の圧迫を取ること、すなわち、ひざのお皿を圧迫方向とは逆方向に浮かせることが、ひざ痛の解消には最も効果的なはずです。

その後、ひざ痛の患者さんたちのひざの状態をチェックしたうえで、ひざが圧迫される感じがしないかをたずねたところ、ほんとんどのかたがひざを伸ばしきれておらず、しかもひざのお皿に圧迫感を抱えていることを確認できました。

なお、最近、ひざ痛に大きく関与する組織として、膝蓋下脂肪体というものが注目されています。膝蓋下脂肪体は、文字どおり、ひざのお皿の下にある脂肪のかたまりで、軟骨とは違って、細い血管や数多くの神経が存在しています。そのため、膝蓋下脂肪体が痛みを感じ取ることが、ひざ痛に関与しているといわれているのです。

ただし、膝蓋下脂肪体自体が炎症を起こしているのではなく、ひざ関節の炎症が膝蓋下脂肪体に影響して痛みを起こしているという考えが主流となっています。ということは、ひざ関節の炎症を取れば、膝蓋下脂肪体にも炎症が伝わらなくなり、ひざが痛むこともなくなると考えられます。

こうした考えをもとに、私はまったく新しいひざ痛の運動療法を考案しました。それが、本書で公開した「ひざのお皿エクササイズ」なのです。

記事の続き(第3回):1回40秒、風呂上がりと外出前の1日2回...「ひざの痛み」が消えるエクササイズ

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米肥満薬開発メッツェラ、ファイザーの100億ドル買

ワールド

米最高裁、「フードスタンプ」全額支給命令を一時差し

ワールド

アングル:国連気候会議30年、地球温暖化対策は道半

ワールド

ポートランド州兵派遣は違法、米連邦地裁が判断 政権
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 2
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2人の若者...最悪の勘違いと、残酷すぎた結末
  • 3
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統領にキスを迫る男性を捉えた「衝撃映像」に広がる波紋
  • 4
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    クマと遭遇したら何をすべきか――北海道80年の記録が…
  • 7
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 8
    【銘柄】元・東芝のキオクシアHD...生成AIで急上昇し…
  • 9
    なぜユダヤ系住民の約半数まで、マムダニ氏を支持し…
  • 10
    長時間フライトでこれは地獄...前に座る女性の「あり…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 5
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 6
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 7
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 8
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 9
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 10
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中