最新記事

ドラマ

朝ドラの深津絵里がスゴい! 18歳のサッチモちゃんを演じる彼女が称賛される理由は?

2022年1月17日(月)07時54分
木村 隆志(コラムニスト、人間関係コンサルタント、テレビ解説者) *東洋経済オンラインからの転載

ちなみにこのサマードレス姿は、3人のヒロインが木の上でそろい踏みしたドラマのメインビジュアル(ホームページトップなどに記載)でも見られます。ここでのポイントは、「若いころの安子、るい、ひなたが集結」というメインビジュアルのコンセプト。つまり、深津さんが二回りほど年齢の離れた上白石さんと川栄さんに合わせた役作りができるから、このコンセプトが成立するということであり、事実として写真に違和感はなく、年齢差を感じさせません。

時折、「18歳には見えない」というコメントも見かけますが、それは昭和30年代の18歳ではなく、「現在の18歳に見えない」という目線で見ている人の声ではないでしょうか。

演技のうまさを見せるのはこれから

そしてもう1つ、深津さんの演技が「やっぱりうまい」と言われる理由として挙げておきたいのが、制作スタッフの力。深津さんを撮るときの距離感と角度、カット割り、ライティング、衣装、背景のセットや音楽など、そのすべてが、るいの透明感につながり、彼女の暮らす空間の温かさを感じさせています。たとえばライティングに注目して見るだけでも、「いかに深津さんの役作りをサポートしているか」がわかるでしょう。

舞台を徹底的に作り込み、妥協なき撮影姿勢と技術で、主演女優の力を引き出す。そんな制作サイドのサポートがあるから深津さんは役作りに集中でき、18歳の女性をそつなく演じられているのです。

このような万全の制作体制は、民放よりも制作費や人的な面で余裕があり、クオリティーを追求できるNHKならではのもの。朝ドラでは「カーネーション」「べっぴんさん」、それ以外では「心の傷を癒すということ」「夫婦善哉」などを手がけたチーフ演出の安達もじりさんを筆頭に、「カムカムエヴリバディ」はNHKの技術力を感じさせる作品なのです。

ただ実のところ、まだ深津さんが持つ本当の演技力が発揮されたシーンは、ごくわずかにすぎません。1月7日放送の第47話で、るいは母・安子と別れたときの記憶がよみがえって複雑な表情を見せ、錠一郞(オダギリジョー)に「あなたのせいで余計なことを思い出してしもうた。忘れたかったのに、忘れるために岡山を出たのに......」と感情的に言い放つシーンがありました。

葛藤と成長を繰り返す、るいをどう演じていくか

今後は、ジョーとの出会いをきっかけに、これまで封印してきた母の記憶がよみがえり、徐々に向き合おうとしていく展開が予告されていますし、その先には「るい」という名前の由来を知るシーンも描かれるでしょう。

さらにそれらがポジティブな方向へつながることは、るいが娘に「ひなた」というルイ・アームストロングの「On the Sunny Side of the Street」にちなんだ名前をつけることからもうかがえます。

「より深読みするなら」という意味で挙げておきたいのは、「るいの結婚相手がジョーとは限らず、むしろ違う人かもしれない」こと。その理由は多少のネタバレにつながるので書きませんが、もしそうならジョーとの恋だけでなく別れが描かれることになり、ここでも深津さんの演技に注目が集まるでしょう。

そんな葛藤と成長を繰り返す、るいを深津さんがどう演じていくのか。本当の意味で「やっぱりうまい」と言われるのは、まさにこれからなのです。

木村隆志(きむら・たかし)

コラムニスト、人間関係コンサルタント、テレビ解説者
テレビ、ドラマ、タレントを専門テーマに、メディア出演やコラム執筆を重ねるほか、取材歴2000人超のタレント専門インタビュアーとしても活動。さらに、独自のコミュニケーション理論をベースにした人間関係コンサルタントとして、1万人超の対人相談に乗っている。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』(TAC出版)など。


※当記事は「東洋経済オンライン」からの転載記事です。元記事はこちら
toyokeizai_logo200.jpg




今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏「ロシア巡り14日に重大声明」、ウクライ

ワールド

銅取引業者、中国で売却模索 関税発動前の米到着間に

ワールド

米FDA、医薬品の非承認通知200通を公開 ケネデ

ビジネス

米テスラ、アリゾナ州で自動運転タクシー事業を申請=
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:大森元貴「言葉の力」
特集:大森元貴「言葉の力」
2025年7月15日号(7/ 8発売)

時代を映すアーティスト・大森元貴の「言葉の力」の源泉にロングインタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 2
    トランプ関税と財政の無茶ぶりに投資家もうんざり、「強いドルは終わった」
  • 3
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に...「曾祖母エリザベス女王の生き写し」
  • 4
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...AP…
  • 5
    アメリカを「好きな国・嫌いな国」ランキング...日本…
  • 6
    名古屋が中国からのフェンタニル密輸の中継拠点に?…
  • 7
    アメリカの保守派はどうして温暖化理論を信じないの…
  • 8
    【クイズ】日本から密輸?...鎮痛剤「フェンタニル」…
  • 9
    ハメネイの側近がトランプ「暗殺」の脅迫?「別荘で…
  • 10
    犯罪者に狙われる家の「共通点」とは? 広域強盗事…
  • 1
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 2
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 3
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...APB「乗っ取り」騒動、日本に欠けていたものは?
  • 4
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸…
  • 5
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に..…
  • 6
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコ…
  • 7
    「本物の強さは、股関節と脚に宿る」...伝説の「元囚…
  • 8
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」…
  • 9
    為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 …
  • 10
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中