最新記事

ISSUES 2022

「巨大テック企業を取り締まる」が世界のコンセンサスになる日

A RECKONING FOR BIG TECH?

2022年1月20日(木)20時55分
アヌ・ブラッドフォード(コロンビア大学法科大学院教授)
マーク・ザッカーバーグ

米下院の公聴会で証言するフェイスブック(現メタ)CEOのザッカーバーグ(2020年7月29日) Mandel Ngan/Pool via REUTERS

<EU、アメリカ、そして中国──反トラスト法などを武器に、テック企業への本格規制に乗り出す各国政府のアプローチと課題とは>

今日の地政学的環境では、世界の政治リーダーたちの足並みがそろうことはほとんどない。しかし、巨大テクノロジー企業に対する規制を強化すべきだという点では、ほぼ意見が一致し始めている。

その背景には、テクノロジー企業が大きくなりすぎたという現実がある。巨大テクノロジー企業は、自社のオンラインマーケットで自社製品・サービスを優遇しているとか、消費者データを不適切に利用して競争を有利に進めているとか、脅威になりそうな会社をことごとく買収することで競争を阻害しているといった批判を浴びてきた。

このような行為は、実質的に消費者の選択肢を奪うものに等しい。今日の消費者は、一握りのテクノロジー企業の製品やサービスに大きく依存しているからだ。

巨大テクノロジー企業への規制強化の動きで先頭を走るのはEUだ。この10年間に、EUは反トラスト法(独占禁止法)違反の疑いでグーグルに100億ドル近くの制裁金を科している。

EUの行政執行機関である欧州委員会は現在、グーグルの広告テクノロジーとデータ収集の手法、アップルのアップストアとモバイル決済システム、フェイスブックのデータ収集とデジタル広告モデル、アマゾンのオンラインマーケット運営の在り方について捜査を進めている。

欧州委員会は欧州議会と加盟国政府に対して、「デジタル市場法」という新しい法律の制定を提案している。これは、巨大テクノロジー企業に対する規制の権限を強化することを目的とするものだ。

新しい法律が実施されれば、影響は世界中に及ぶだろう。巨大多国籍企業はしばしば、EUの規制に対処する措置を全世界の事業活動に拡大してきたからだ。この現象は「ブリュッセル効果」と呼ばれる(ベルギーの首都ブリュッセルはEU本部の所在地)。

アメリカは比較的最近まで、EUが反トラスト法を駆使してアメリカのテクノロジー企業への締め付けを強めるのを傍観していた。しかし、風向きが変わり始めた。米議会の下院は、巨大テクノロジー企業の幹部たちをたびたび公聴会に呼び出している。近年、司法省はグーグルを、連邦取引委員会(FTC)はフェイスブックを反トラスト法違反で提訴している。

中国政府も脱放任主義へ

バイデン政権も、こうした政策転換を強く支持している。テクノロジー企業への厳しい姿勢で知られる人物を相次いで要職に指名しているのはその表れだ。2021年7月には「米経済の競争促進」を目指す野心的な大統領令に署名。巨大テクノロジー企業などの独占的行為に厳しく対処する姿勢を鮮明にした。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ユーロ圏インフレは当面2%程度、金利は景気次第=ポ

ビジネス

ECB、動向次第で利下げや利上げに踏み切る=オース

ビジネス

ユーロ圏の成長・インフレリスク、依然大きいが均衡=

ビジネス

アングル:日銀、追加利上げへ慎重に時機探る 為替次
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開したAI生成のクリスマス広告に批判殺到
  • 2
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 3
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 4
    おこめ券、なぜここまで評判悪い? 「利益誘導」「ム…
  • 5
    ゆっくりと傾いて、崩壊は一瞬...高さ35mの「自由の…
  • 6
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 7
    【独占画像】撃墜リスクを引き受ける次世代ドローン…
  • 8
    中国最強空母「福建」の台湾海峡通過は、第一列島線…
  • 9
    中国の次世代ステルス無人機「CH-7」が初飛行。偵察…
  • 10
    中国、ネット上の「敗北主義」を排除へ ――全国キャン…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 9
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 10
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 6
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 7
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 8
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 9
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中