最新記事

東南アジア

比ドゥテルテ、上院選出馬を撤回 来春の任期満了で政界引退の意向

2021年12月15日(水)19時48分
大塚智彦
フィリピンのドゥテルテ大統領

大統領の任期終了後も政治の世界に留まろうとしていたドゥテルテだったが。 Lean Daval Jr - REUTERS

<大統領から副大統領など、退任後の活動について二転三転したが──>

2022年5月に行われるフィリピンの大統領選挙で同時に行われる上院議員選挙に立候補していたドゥテルテ大統領は12月14日、立候補の辞退を選挙管理委員会に届け出た。

これによりドゥテルテ大統領は任期が切れる2022年5月以降、政治の第一線を退く可能性が高くなってきた。

ドゥテルテ大統領は14日午後5時前、上院議員選挙への出馬を辞退することを表明。また内閣のカルロ・ノグラレス官房長官も声明で「ドゥテルテ大統領は、上院議員を目指して選挙活動するよりも、現在フィリピンが直面している新型コロナのパンデミック対策に専念する」と明らかにし、選挙戦からの撤退を確認した。さらに「ドゥテルテ大統領は来年の選挙が透明で公平性のあるものとするため全力を投じる所存である」ということも強調した。

最大与党の大統領候補者も撤退

ドゥテルテ大統領の上院選辞退声明の前に最大与党「PDPラバン」の大統領候補だったクリストファー・ボン・ゴー上院議員は「大統領選の候補を辞退する」ことを表明し、「PDPラバン」の大統領候補は空席となる事態となった。

ボン・ゴー氏はドゥテルテ大統領の側近で一時はボン・ゴー氏が大統領候補、ドゥテルテ大統領が副大統領候補として正副大統領を同党で独占する動きも見せていた時期もあった。

すでに候補者の入れ替え受付期間は終了しているため、「PDPラバン」としてはドゥテルテ大統領の後任の大統領候補不在のままで選挙戦を戦うことになった。

マルコス氏が有利な状況に

今回のドゥテルテ大統領の上院選辞退、最大与党「PDPラバン」の大統領候補の撤退という事態は、大統領選に立候補しているマルコス元大統領の長男、フェルディナンド・マルコス・ジュニア(愛称ボンボン・マルコス)氏に有利に働くとみられている。

最近の世論調査でもボンボン・マルコス氏は大統領候補者として圧倒的な人気を得ており、ドゥテルテ政権の各種政策の継承を訴えている同氏に与党系、保守系の票が集中することも予想され、大統領選ではかなり有利な状況が生まれたことになる、との見方が強い。

ボンボン・マルコス氏とペアを組んで副大統領選に立候補しているドゥテルテ大統領の長女でミンダナオ島ダバオ市のサラ・ドゥテルテ市長も世論調査で断トツの人気を得ており、現状では「ボンボン・マルコス大統領、サラ副大統領」が誕生する可能性が強くなっている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

北朝鮮の金与正氏、日米韓の軍事訓練けん制 対抗措置

ワールド

ネパール、暫定首相にカルキ元最高裁長官 来年3月総

ワールド

ルイジアナ州に州兵1000人派遣か、国防総省が計画

ワールド

中国軍、南シナ海巡りフィリピンけん制 日米比が合同
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる」飲み物はどれ?
  • 3
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人に共通する特徴とは?
  • 4
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 5
    腹斜筋が「発火する」自重トレーニングとは?...硬く…
  • 6
    電車内で「ウクライナ難民の女性」が襲われた驚愕シ…
  • 7
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 8
    【動画あり】火星に古代生命が存在していた!? NAS…
  • 9
    悪夢の光景、よりによって...眠る赤ちゃんの体を這う…
  • 10
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベー…
  • 1
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 2
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 3
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサイルが命中、米政府「機密扱い」の衝撃映像が公開に
  • 4
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 5
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 6
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 7
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 8
    埼玉県川口市で取材した『おどろきの「クルド人問題…
  • 9
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 6
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 7
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 8
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 9
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
  • 10
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中