最新記事

石油備蓄

石油国家備蓄放出でもガソリン価格が下がりそうにない理由

Biden's Use of Oil Reserves Likely Too Little, Too Late for Thanksgiving Gas Prices

2021年11月24日(水)19時10分
ジョン・ジャクソン

23日の演説で石油備蓄の放出を発表したとき、バイデンも同様の懸念に触れた。

「元売り市場のガソリン価格はここ数週間で約10%下落したが、ガソリンスタンドでの店頭価格はまったく下がっていない」と、バイデンは言った。「元売り各社がそれだけ余分に儲けている。原油価格の下落はガソリンスタンドに来る消費者の利益にはつながっていない」

「石油の元売り各社は差額を利益としてポケットに入れている。それは容認できない」と、バイデンは述べた。「だから、アメリカ国民にとってガソリン価格が公正なものになるように、米連邦取引委員会(FTC)に対し、石油・ガス業界における違法かつ反競争的とみられる行動が消費者価格の上昇を引き起こしているかどうか調査を求めている」

実質的にFTCがなんらかの行動をとるまでには数週間かかりそうだ。石油備蓄の放出はそれまでの間に、消費者にとって短期的な救済となるような気がするとグラッデンは言う。

「すでに市場は備蓄の放出を織り込み済みなので、今週末までにいくつか小さな変動が現れると思う」と、彼は予測する。「そして来週月曜日、感謝祭の連休が明けてすべてが平常に戻った時には、ガソリン価格は確実に下がっているだろう」

「とはいえ、どの程度の下落になるだろうか。昨年のホリデーシーズン並みの価格を期待すべきではないと思う」と、グラッデンは続けた。

一時しのぎに過ぎない

実際にガソリン価格が下がれば、「大統領がとった行動に効力があったことになる」とデ・ハーンは語る。それでもバイデンは、「より短期的に解決を図るために、長期的な解決を犠牲にしたかもしれない」とも言う。

「価格を下げたいというバイデンの言葉に嘘はないと思う」とデ・ハーンは言いつつ、備蓄に手をつける計画は「すぐには解消できない問題に対する一時しのぎにすぎないだろう」と言う。

バイデンは23日に、ガソリン価格変動との戦いは今後も続くと語り、国民に忍耐を求めた。

「われわれの共同作戦で、ガソリン価格高騰の問題が一夜にして解決されるわけではないが、状況は改善されるだろう。時間はかかるが、やがて国民が車にガソリンを入れる際に、価格の下落を実感するときがくるはずだ」とバイデンは語った。

ニューズウィーク日本版 ISSUES 2026
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年12月30日/2026年1月6号(12月23日発売)は「ISSUES 2026」特集。トランプの黄昏/中国AIに限界/米なきアジア安全保障/核使用の現実味/米ドルの賞味期限/WHO’S NEXT…2026年の世界を読む恒例の人気特集です

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米国株式市場=続伸、S&Pが終値で最高値 グロース

ビジネス

再送-11月の米製造業生産は横ばい、自動車関連は減

ワールド

米最高裁、シカゴへの州兵派遣差し止め維持 政権の申

ビジネス

NY外為市場=ドル下落、GDP好調でもFRB利下げ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者・野村泰紀に聞いた「ファンダメンタルなもの」への情熱
  • 2
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 3
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 4
    ジョンベネ・ラムジー殺害事件に新展開 父「これま…
  • 5
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 6
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
  • 7
    「何度でも見ちゃう...」ビリー・アイリッシュ、自身…
  • 8
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 9
    なぜ人は「過去の失敗」ばかり覚えているのか?――老…
  • 10
    楽しい自撮り動画から一転...女性が「凶暴な大型動物…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 9
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 10
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中