最新記事

日中関係

日本を中国従属へと導く自公連立――中国は「公明党は最も親中で日本共産党は反中」と位置付け

2021年10月28日(木)11時08分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

中国建国当初の中国共産党と日本共産党の仲は、まさに「義兄弟」のようで、当時、新華書店などには毛沢東やスターリン、あるいはマルクスなどと共に、日本共産党の「徳田球一」の肖像画が並べてあったものだ。

私は徳田球一の名を、「とくだ きゅういち」ではなく、中国語の発音の【de tian qiu yi】として初めて知った。

それが犬猿の仲になったのは、文化大革命が勃発した1966年からだ。

中国側の分析は以下のように書いている。

一、日本共産党の宮本顕治(書記長)を団長とする訪中団は広州に行くことになっていたが、突然中国側から上海に行って毛沢東と会談してほしいという提案があった。

二、毛沢東は宮本顕治にソ連を修正主義者として批判することを求めたが、宮本はこの提案を拒否し、毛沢東は大いに不満を抱いた。 その後、中国共産党は日本共産党の修正主義路線を全面的に批判するようになった。

三、毛沢東は1966年7月の演説で、「ソ連の現代修正主義、アメリカ帝国主義、宮本顕治修正主義グループ、佐藤栄作の反動内閣」という4つの敵がいると表明した。

四、それ以降、中国においては「日本共産党はソ連やアメリカよりも、さらには中国を敵視していた佐藤栄作内閣よりも危険な敵」となった。

五、中共が日共と和解したのは1998年に宮本が引退してからだが、今もなお日共に対する不信感は、完全には拭えないでいる。

但し、日本共産党がその後の綱領で、日米安保条約の破棄や在日米軍の撤退を明記していることに関しては高く評価している。

衆院選で公明党と連立する自民党を選ぶと、日本は中国のコントロール下に

しかし中国は、日本共産党を通して日本政府を動かすことはできないと認識しており、あくまでも公明党と緊密に連絡し合い、公明党を通して日本の内閣を反中に向かわないようにコントロールしている。

だから中国は自公連立を強く応援しているのである。

このような中、今般の衆院選で公明党を選び、公明党と連立する自民党を選ぶと、日本は中国共産党の思うままにコントロールされ続けることを有権者は気が付いてほしい。

拙著『習近平 父を破滅させた鄧小平への復讐』の第七章の四に詳述したように、日本は中国共産党の発展にただひたすら貢献してきた。戦略に長けた中国は、今は公明党を使って日本を利用し、中国共産党の発展にさらに貢献させようとしているのである。

日本は、それでいいのか?

この現状を受け入れ続けるのか?

だからと言って個人的には日本共産党を支持するのではないが、しかし、このカラクリだけは、日本の選挙民に直視してほしいと切望する。


※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。

この筆者の記事一覧はこちら

51-Acj5FPaL.jpg[執筆者]遠藤 誉
中国問題グローバル研究所所長、筑波大学名誉教授、理学博士
1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。中国問題グローバル研究所所長。筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会学研究所客員研究員・教授などを歴任。著書に『裏切りと陰謀の中国共産党建党100年秘史  習近平 父を破滅させた鄧小平への復讐』(ビジネス社、3月22日出版)、『ポストコロナの米中覇権とデジタル人民元』、『激突!遠藤vs田原 日中と習近平国賓』、『米中貿易戦争の裏側 東アジアの地殻変動を読み解く』,『「中国製造2025」の衝撃 習近平はいま何を目論んでいるのか』、『毛沢東 日本軍と共謀した男』、『卡子(チャーズ) 中国建国の残火』、『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』、『中国がシリコンバレーとつながるとき』など多数。

20240521issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2024年5月21日号(5月14日発売)は「インドのヒント」特集。[モディ首相独占取材]矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディの言葉にあり

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ロ中、ガス輸送管「シベリアの力2」で近い将来に契約

ビジネス

米テスラ、自動運転システム開発で中国データの活用計

ワールド

上海市政府、データ海外移転で迅速化対象リスト作成 

ワールド

ウクライナがクリミア基地攻撃、ロ戦闘機3機を破壊=
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 2

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた異常」...「極めて重要な発見」とは?

  • 3

    存在するはずのない系外惑星「ハルラ」をめぐる謎、さらに深まる

  • 4

    羽田空港衝突事故で「日航の奇跡」を可能にした、奇…

  • 5

    「円安を憂う声」は早晩消えていく

  • 6

    老化した脳、わずか半年の有酸素運動で若返る=「脳…

  • 7

    アメリカはどうでもよい...弾薬の供与停止も「進撃の…

  • 8

    共同親権法制を実施するうえでの2つの留意点

  • 9

    日鉄のUSスチール買収、米が承認の可能性「ゼロ」─…

  • 10

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 5

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 6

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中