最新記事

調査報道

「上級国民」たちの腐敗度が露わに...パンドラ文書、衝撃の中身

Enabling Kleptocracy

2021年10月13日(水)18時20分
ケーシー・ミシェル(調査報道ジャーナリスト)
ブレア元英首相

ブレア元英首相も富裕層の典型的な「節税」手法を駆使していた1人 TOBY MELVILLEーREUTERS

<人々を抑圧して国家の富を貪る「泥棒政治家」の蓄財を、民主国家の大物政治家たちが助けるシステムが明らかに>

自由と民主主義の旗を高々と掲げるわが陣営は世界中の専制主義国家と互いの存続を懸けて戦っている──欧米諸国の指導者はそう豪語する。まさにその戦いのために、ジョー・バイデン米大統領は今年12月に「民主主義サミット」を開催すると宣言した。

バイデンやその呼び掛けに応じた首脳たちの現状認識は間違っていない。確かに今、中国からロシアまで専制政治や強権支配がまかり通り、民主化の動きを圧殺し、リベラルな国際秩序を脅かしている。

だがそれを阻止しようとするバイデンらの試みには重大な「見落とし」がある。それは欧米の民主国家とその指導者らが独裁者の不正蓄財を助けている、という事実だ。

欧米には世界中の独裁者が不正に蓄えた資金を動かし、隠匿し、洗浄できる仕組みがあり、当局もそれを黙認しているのだ。

不正資金の最初の引き受け手はペーパーカンパニーだ。そこに資金を移せば、個人を特定できる情報は全て剝ぎ取られ、いわば「匿名の資金」となる。その金が不動産や高級品、美術品などの資産に化ける。この手の取引では、仲介業者や売り手は出所不明の金を喜んで受け入れ、法外な手数料や暴利を貪る。

法の網の目を巧みにかいくぐるこうした資金の流れは、世界中の独裁者にとって願ってもない仕組みだ。それがあるおかげで彼らはこっそり欧米に資金を移し、欧米の金融機関の個人情報保護ポリシーを悪用して匿名の資産を保有できる。

この巧妙なカラクリを白日の下にさらしたのが、10月3日に公開された「パンドラ文書」だ。国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)が法律事務所や金融サービス会社から入手した膨大な財務資料などを分析してまとめた。

不正資金の取引を黙認してきた実態

パンドラ文書はアメリカ、イギリス、カナダ、フランス、ドイツなどの当局が不正資金の取引を黙認し、独裁者の蓄財を助けてきた実態を暴き出した。資料から国家の富を私物化する「泥棒政治家」のマネーロンダリング(資金洗浄)を助ける巨大なネットワークの全貌を詳細にたどれる。

このネットワークを通じて、世界中から欧米に何十億ドル(場合によってはそれ以上)もの単位でどんどん資金が流入しているのだ。それが国庫からくすねた金だろうと、少数民族から搾取した金だろうと、それで儲けた業者の法的責任が問われることはない。

例えばアゼルバイジャンの独裁的なイルハム・アリエフ大統領の一族は何億ドルもの資金をロンドンの金融会社に託していた。EU離脱後のロンドンはますます資金洗浄の中心地になり、この手の不正資金の流入は珍しくない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、グリーンランド巡る対欧関税撤回 「NA

ワールド

トランプ氏、次期FRB議長候補者絞り込み 決定間近

ワールド

トランプ氏、次期FRB議長候補者絞り込み 決定間近

ワールド

トランプ氏、全米行脚へ 中間選挙に向け有権者との対
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:「外国人問題」徹底研究
特集:「外国人問題」徹底研究
2026年1月27日号(1/20発売)

日本の「外国人問題」は事実か錯誤か? 7つの争点を国際比較で大激論

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    完全に「ホクロ」かと...医師も見逃した「皮膚がん」の写真がSNSで話題に、見分け方「ABCDEルール」とは?
  • 2
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コングスベルグ社のNSMにも似ているが...
  • 3
    韓国が「モンスター」ミサイルを実戦配備 北朝鮮の核開発にらみ軍事戦略を強化
  • 4
    ニュージーランドの深海に棲む、300年以上生きている…
  • 5
    飛行機よりラク? ソウル〜釜山「110分」へ――韓国が…
  • 6
    ピラミッドよりも昔なのに...湖底で見つかった古代の…
  • 7
    【総選挙予測:自民は圧勝せず】立憲・公明連合は投…
  • 8
    「怖すぎる...」モルディブで凶暴な魚の群れに「襲撃…
  • 9
    宇宙人の存在「開示」がもたらす金融黙示録──英中銀…
  • 10
    サーモンとマグロは要注意...輸入魚に潜む「永遠の化…
  • 1
    上野公園「トイレ騒動」に見る、日本のトイレが「世界一危険」な理由
  • 2
    ピラミッドよりも昔なのに...湖底で見つかった古代の船が明かす、古代の人々の「超技術」
  • 3
    世界初で日本独自、南鳥島沖で始まるレアアース泥試掘の重要性 日本発の希少資源採取技術は他にも
  • 4
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率…
  • 5
    韓国『日本人無料』の光と影 ── 日韓首脳が「未来志向…
  • 6
    正気を失った?──トランプ、エプスタイン疑惑につい…
  • 7
    世界最大の埋蔵量でも「儲からない」? 米石油大手が…
  • 8
    完全に「ホクロ」かと...医師も見逃した「皮膚がん」…
  • 9
    中国のインフラ建設にインドが反発、ヒマラヤ奥地で…
  • 10
    【銘柄】「住友金属鉱山」の株価が急上昇...銅の高騰…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 6
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 7
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 8
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 9
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 10
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中