最新記事

日本政治

「妥協の産物」岸田文雄が長期政権を築く可能性

Picking the Safe Option

2021年10月4日(月)17時30分
ウィリアム・スポサト(ジャーナリスト)

日本の旧植民地で、日本の政府関係者にとって常に身近な存在でありながら、国際舞台では影が薄い台湾についても、自民党内で積極的な発言が増えている。高市は9月20日に台湾の蔡英文(ツァイ・インウェン)総統とオンラインで会談。これからも「緊密に連絡を取り合いたい」と語り掛けた。

さらに踏み込んだ発言をしたのは、奔放な発言で知られる麻生太郎元首相だ。今年7月、麻生は中国が台湾に侵攻した場合、日本の「存立危機事態」に関係してくるとして、日米で台湾の防衛をすることを考えてもおかしくないと述べた(日本政府は麻生の個人的見解だと強調している)。

問題は、岸田新政権が対中政策を変更するのか、それとも選挙戦でのレトリックのままにしておくのかということだ。シンクタンク、アメリカ進歩センターのアジア担当シニアフェローのトバイアス・ハリスは、ツイッターに次のように投稿している。

「岸田が中国に対してより強硬な路線を明らかにしていることは、たとえ右派の支持を固めるためであっても、自民党の中道が対中強硬路線にシフトしていることを示す確かな兆候だ」

参院選を生き残れるか

河野にとって、今回の敗北は大きな痛手だろう。総裁選の投票直前に日本経済新聞とテレビ東京が行った世論調査では、岸田の支持率17 %に対し、河野は46%と大差のトップだった。決選投票でも47の都道府県票のうち39票を獲得している。

大きな敗因は、同僚議員の支持が集まらなかったことだ。祖父と父親が有力な政治家という血筋を誇り、安倍政権で外相と防衛相を務めた河野だが、唐突な言動でも知られている。

2020年6月には、北朝鮮の脅威に備えて日本政府がアメリカと連携して進めていた地上配備型迎撃ミサイルシステム、イージス・アショアの配備プロセスを停止すると突然、発表。担当者は事後の調整に追われた。

また、河野は社会的にリベラルとみられており、同性婚やLGBTQ(同性愛など性的少数者)の権利に賛同を表明している。同性婚は日本人の間で支持が広まりつつあるが、自民党ではあまり好まれない。

一方で、自身の権力基盤を持たずスター性もない岸田は、もう1つ重要な課題を抱えている。いかにして日本の「回転ドア」の首相に名を連ねないか、ということだ。

安倍の在任記録を別にして、2006年以降の日本の首相の平均在任期間はわずか381日。国際的な論争で目立つことを嫌う日本は、安倍長期政権の前は、国際舞台で存在感を失う一方だった。

日本の有権者は、安倍の劇場型政治を見せられるまでは、精彩を欠くリーダーシップに当然ながら不満を募らせていた。新政権発足直後のハネムーン期間も短い。無愛想な菅でさえ、就任時の支持率は74%だったが、総裁選への再出馬を見送った今年9月には30%程度まで落ち込んだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イラン新指導者のホルムズ海峡封鎖発言、「深く懸念」

ワールド

イラン戦争開始から2週間、双方が徹底抗戦の姿勢 死

ワールド

米・チリ、レアアースなど重要鉱物巡る協議開始で合意

ワールド

原油先物下落、米がロシア産石油購入を30日間許可
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのミュージカル入門
特集:教養としてのミュージカル入門
2026年3月17日号(3/10発売)

社会と時代を鮮烈に描き出すミュージカル。意外にポリティカルなエンタメの「魔力」を学ぶ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」と言われる外国特派員の私が思うこと
  • 2
    職業別の収入に大変動......タクシー運転手・自動車整備は収入増、公認会計士・税理士は収入減
  • 3
    「このままよりはマシだ」――なぜイランで米軍の攻撃に支持が広がるのか
  • 4
    「イラン送りにすべき...」トランプ孫娘、警護隊引き…
  • 5
    世界の視線は中東から日本へ...企業主導で築くインド…
  • 6
    「映画賞の世界は、はっきり言って地獄だ」――ショー…
  • 7
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 8
    2万歩でも疲れない? ディズニー・ユニバで足が痛く…
  • 9
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...…
  • 10
    イランがドバイ国際空港にドローン攻撃...爆発の瞬間…
  • 1
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 2
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 3
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」と言われる外国特派員の私が思うこと
  • 4
    「このままよりはマシだ」――なぜイランで米軍の攻撃…
  • 5
    キャサリン皇太子妃、英連邦デー式典に出席...公開さ…
  • 6
    【長期戦はイラン有利】米側の体制転覆シナリオに暗…
  • 7
    職業別の収入に大変動......タクシー運転手・自動車…
  • 8
    日本の保護者は自分と同じ「大卒」の教員に敬意を示…
  • 9
    中国はイランを見捨てた? イランの「同盟国」だっ…
  • 10
    中国、4隻目の空母は原子力艦か──世界3番目の原子力…
  • 1
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 4
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...…
  • 5
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 6
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 7
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 8
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 9
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 10
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中