最新記事

米軍事

中国「極超音速」兵器、迎撃不可能と大騒ぎすることの馬鹿らしさ

China’s “Hypersonic” Missile Test

2021年10月29日(金)12時35分
フレッド・カプラン(スレート誌コラムニスト)

地球の全生命を何度も滅ぼせるほどの核兵器が存在し、ほとんどのアメリカ人を殺すにはそのごく一部で十分──そんな恐ろしい事実から誰もが目を背けたがる。その結果、アメリカはMDシステムに固執し、米議会は長年MDAに予算を大盤振る舞いしてきた。問題は、強力な防衛策を構築できても、中国(とロシア)のように敵の攻撃力増強を促すだけということだ。

MDAは「行動するきっかけ」に反応するはずだ。存在も精度も不確かな中国の極超音速ミサイルに対抗するべく、さらに多くの予算を要求するだろう。

中国の脅威について、米太平洋空軍の戦略責任者は「われわれの考える中国の思惑ではなく、物理的観点から何が可能かに目を向けるべきだ」と語っている。米軍幹部は数限りなく脅威を想定し、それに対抗するべく数限りなく新兵器を考案し、その開発に途方もない巨費を投じる。

まるで米ソ冷戦の再来だ。幸い、前回はおおむねいい終わり方をした。だが今回は当事国は2つだけでなく、世界がはるかに細分化され、技術もはるかに進歩している。悲惨な結末を迎えかねないゲームを中止する道を、全ての当事国が探るべきだ。

©2021 The Slate Group

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

日本との関税協議「率直かつ建設的」、米財務省が声明

ワールド

アングル:留学生に広がる不安、ビザ取り消しに直面す

ワールド

トランプ政権、予算教書を公表 国防以外で1630億

ビジネス

NY外為市場=ドル下落、堅調な雇用統計受け下げ幅縮
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得る? JAXA宇宙研・藤本正樹所長にとことん聞いてみた
  • 2
    古代の遺跡で「動物と一緒に埋葬」された人骨を発見...「ペットとの温かい絆」とは言えない事情が
  • 3
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 4
    日々、「幸せを実感する」生活は、実はこんなに簡単…
  • 5
    インドとパキスタンの戦力比と核使用の危険度
  • 6
    目を「飛ばす特技」でギネス世界記録に...ウルグアイ…
  • 7
    宇宙からしか見えない日食、NASAの観測衛星が撮影に…
  • 8
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が…
  • 9
    なぜ運動で寿命が延びるのか?...ホルミシスと「タン…
  • 10
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 7
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 8
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が…
  • 9
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 10
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中