最新記事

ビジネス

東南アジアで新型コロナ感染がピークアウトの兆し

2021年9月7日(火)14時22分
斉藤誠(ニッセイ基礎研究所)

[マレーシア:ワクチン接種の進展で感染拡大ペースが鈍化、規制緩和に舵]

マレーシアの新規感染者数の推移マレーシアでは、今年2月をピークに感染第2波が沈静化した後、4月に入って第3波が到来した(図表7)。マレーシア政府は5月12日から全国で3回目となる厳格な活動制限令(MCO 3.0)を実施して州をまたぐ移動やレストランなどでの店内飲食を禁止したが、イスラム教の断食明け大祭(ハリラヤ・プアサ、2021年は5月13~14日)後に感染ペースが加速した。

nissei20210906195107.jpg

マレーシア政府は6月から全土で大規模な都市封鎖を実施して国が必要不可欠と認めた業種以外の社会・経済活動が禁止されることとなった。しかし、その後も変異株の蔓延や規制疲れなどによって感染拡大に歯止めがかからず、新規感染者数は1日あたり2万人台に達した。

マレーシア政府はコロナ禍からの復興の道筋として「国家回復計画(NRP)」を4段階で示し、感染状況やワクチン接種などの目標を定めて州ごとに段階的な制限緩和を進めている。現在首都圏を含む8つの州および連邦直轄領(全体で16)は4段階のうちの第1期1(都市封鎖に相当)のままだが、このところマレーシア政府はワクチン接種完了者に対する活動制限の緩和を矢継ぎ早に打ち出している。まず8月10日から国家回復計画の第2期以降にある地域においてワクチン接種完了者の店内飲食や州内の移動制限などが一部緩和、20日には同様の規制が第1期の地域にも適用された。また同月16日から従業員のワクチン接種率に応じて企業の操業規制が緩和されている。足元の感染拡大ペースは鈍化してきたとはいえ、感染第3波が沈静化していないなかで見切り発車に近い形での規制緩和となっている。

[フィリピン:経済への影響を考慮して外出・移動制限を1段階引き下げ]

フィリピンの新規感染者数の推移フィリピンでは今年3月から変異株の流入や規制疲れなどによって感染第2波が発生した(図表8)。3月15日からマニラ首都圏が夜間外出禁止令を発令するなど各自治体が制限強化に舵を切り、同月29日にはフィリピン政府が首都圏と周辺4州における外出・移動制限措置を最高水準に引き上げた。住民は食料品の購入など必要不可欠な外出以外が禁止され、企業活動は食品や医薬品、銀行、輸出加工型などに限られることとなった。

nissei20210906195108.jpg

────────────────
1 国家安全保障会議(NSC)は第2期への移行の目安について、1日当たりの新規入院患者数が成人人口10万人当たり6.1人未満となり、ワクチン接種率(2回完了)が成人人口比で50%以上、集中治療室(ICU)の病床使用率が「中程度」であることとしている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

台湾の頼次期総統、20日の就任式で中国との「現状維

ワールド

イスラエル軍、ガザ北部で攻勢強化 米大統領補佐官が

ワールド

アングル:トランプ氏陣営、本選敗北に備え「異議申し

ビジネス

日本製鉄副会長が来週訪米、USスチール買収で働きか
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバいのか!?

  • 3

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイジェリアの少年」...経験した偏見と苦難、そして現在の夢

  • 4

    「まるでロイヤルツアー」...メーガン妃とヘンリー王…

  • 5

    時速160キロで走行...制御失ったテスラが宙を舞い、4…

  • 6

    チャールズ英国王、自身の「不気味」な肖像画を見た…

  • 7

    英供与車両から巨大な黒煙...ロシアのドローンが「貴…

  • 8

    日本とはどこが違う? 韓国ドラマのオリジナルサウン…

  • 9

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 10

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 1

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 2

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 3

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 9

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 10

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 4

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中