最新記事

アフガニスタン

アフガン撤退、バイデンの「テロ対処能力ある」に批判が続出する理由

ISLAMIC TERRORISM AGAIN?

2021年9月2日(木)17時55分
マイケル・ハーシュ(フォーリン・ポリシー誌上級特派員)

アフガニスタン上空へのアクセスの欠如は、テロリストに先制攻撃をかける上で致命的な制約になり得ると言うのは、CIAの元テロ作戦担当者フィリップ・ジラルディだ。

「当分の間、タリバンが(テロ活動の容認といった)挑発的行動に出る可能性は低いとみているが」と彼は語る。「それで安心していいとは思わない。アフガニスタンは海に面していない。だから、あそこのテロリストを排除するにはパキスタンを含む周辺諸国の協力が不可欠だ」

CIAがタリバンとの関係構築を模索するのはいいが、問題はタリバン側が、新政府樹立の協議にシラジュディン・ハッカニのような人物(アルカイダとつながりのあるハッカニ・ネットワークの指導者で有名なテロリスト)を加えている点だとクリシュナムルティも指摘する。

「長年テロリストの最重要指名手配リストに載ってきたハッカニが、わが国の信頼できるパートナーになり得るとは、少なくとも私には考えにくい」と彼は言う。

バイデン大統領の見通しは甘過ぎる、と言うのは元CIA職員で中東情勢に詳しいルエル・マルク・ゲレヒト。

軍用ドローンによる攻撃能力がどんなに上がっても、近くに基地がなく現地にスパイがいなければ、テロリスト相手に戦う能力は確実に落ちるからだ。

「アフガニスタン領内に潜むイスラム武装勢力をたたき、殺傷する」という目標に関する限り、米情報機関の能力は「小学生並み」にまで落ちるだろうとゲレヒトは言う。

「(四半世紀前の)クリントン政権時代に逆戻りだ。こちらがミサイルを撃ち込んでも標的はとっくに逃げている、そんな時代だ。いや応なく、わが国もヨーロッパ流のテロ対策に転じざるを得ない。つまり、攻めから守りへの転換だ」

From Foreign Policy Magazine

▼本誌9月7日号「テロリスクは高まるか」特集では、米軍撤退目前に起きた空港テロが意味するもの、アメリカの対テロ戦争は20年前の振り出しに戻ったのか?を様々な角度からリポートする。

ニューズウィーク日本版 教養としてのBL入門
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年12月23日号(12月16日発売)は「教養としてのBL入門」特集。実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気の歴史と背景をひもとく/日米「男同士の愛」比較/権力と戦う中華BL/まずは入門10作品

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、大麻規制緩める大統領令に近く署名か 米

ワールド

ウクライナ、東部要衝都市を9割掌握と発表 ロシアは

ビジネス

ウォラーFRB理事「中銀独立性を絶対に守る」、大統

ワールド

米財務省、「サハリン2」の原油販売許可延長 来年6
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 5
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 6
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 7
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 8
    【銘柄】「日の丸造船」復権へ...国策で関連銘柄が軒…
  • 9
    9歳の娘が「一晩で別人に」...母娘が送った「地獄の…
  • 10
    【人手不足の真相】データが示す「女性・高齢者の労…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 4
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 5
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 6
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 7
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 8
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 9
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 10
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中