最新記事

アフガニスタン

タリバン政権のテロ復活抑止に関する米中攻防――中露が「テロを許さない」と威嚇する皮肉

2021年8月18日(水)19時44分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)
スペインのアフガニスタン人の反応

タリバンがアフガン首都掌握 世界各地の反応(写真は4月16日、スペインのアフガン料理レストラン) Nacho Doce-REUTERS

タリバン政権誕生に際して世界が最も心配するのはテロ活動の復活だ。しかし中露が連携してタリバンにテロ活動を許さないと威嚇している。特に中国はウイグル弾圧の口実として「反テロ対策」を強調してきた。それに対してアメリカ(ポンペオ前国務長官)は「テロ組織は既に存在しないことを確認している」として中国のウイグル弾圧を非難してきた。だから中国は何が何でも「テロ活動は許さない」とタリバンに対して叫び続けているのである。「反テロ対策」に関する米中攻防とタリバンとの関係に注目して考察する。

8月9日の中露「反テロ」軍事演習

8月15日のコラム<タリバンが米中の力関係を逆転させる>で書いたように、タリバンのスハイル・シャヒーン報道官は7月9日に以下のように述べている

●以前アフガニスタンに避難していた中国のウイグル人分離独立派戦闘員の入国を、タリバンは今後許さない。

●タリバンは、アルカイーダやその他のテロリストグループが現地で活動することも阻止し、アメリカやその同盟国、あるいは「世界の他の国」に対する攻撃を行うことを許さない。

「テロ活動を行わないこと」を何度も確認したい中国は、7月28日の天津における王毅外相とタリバン代表団との会談で、さらに以下のように念押ししている。

王毅曰(いわ)く:

――タリバンは、東トルキスタン・イスラム運動など全てのテロ組織との線引きを明確にして徹底させ、断固として戦い、地域の安全と安定および開発協力の障害を取り除き、積極的な役割を果たし、有利な条件を作り出すことを期待している。

これに対してタリバン側は「アフガニスタンの領土を使って中国に不利なことをする勢力を絶対に許さない」と約束した。

だというのに、それでもなお、8月9日になって、中国はロシアと連携して「反テロ対策」を目的とした軍事演習を行ったと新華網が伝えた

これは何を意味しているかというと、「タリバン政権が誕生した後に、万一にもテロ活動の復活をしようものなら、中露両軍が結束してタリバンをやっつけるから、そのつもりでいろ」ということを、まもなく誕生するであろうタリバン政権に対して威嚇しているということなのである。

8月16日、中露外相電話会談で警告

それでも足りずに、8月16日、中国の王毅外相はロシアのラブロフ外相と電話会談をしテロ問題を話し合った

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

マクドナルド、世界の四半期既存店売上高が予想外の減

ビジネス

米KKRの1─3月期、20%増益 手数料収入が堅調

ビジネス

米フォード、4月の米国販売は16%増 EVは急減

ワールド

米イラン核協議、3日予定の4回目会合延期 「米次第
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 5
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 6
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 7
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 8
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 9
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 10
    【徹底解説】次の教皇は誰に?...教皇選挙(コンクラ…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中