最新記事

中国王毅外相「米国の性急なアフガニスタン撤退が深刻な悪影響」 安定確保には協力

2021年8月17日(火)11時49分

中国の王毅国務委員兼外相は、アフガニスタン情勢を巡りブリンケン米国務長官と電話で協議し、駐留米軍の性急な撤退が「深刻な悪影響」をもたらしたと非難した。フィリピン・マニラで1月16日、代表撮影(2021年 ロイター)

中国の王毅国務委員兼外相は16日、アフガニスタン情勢を巡りブリンケン米国務長官と電話で協議し、駐留米軍の性急な撤退が「深刻な悪影響」をもたらしたと非難した。ただ、現地の安定確保に向けて米政府と協力する考えを示した。

米国務省は声明で、ブリンケン氏と王氏が「安全保障の状況や米中市民の安全確保に向けたそれぞれの取り組み」について協議したと発表。

ブリンケン氏が別途、ロシアのラブロフ外相と電話協議したことも明らかにした。

中国国営中央テレビ(CCTV)によると、王氏はブリンケン氏との電話で、アフガンの現状は、文化や歴史的条件が異なる国に外国のモデルを恣意的に適用できないことを証明していると指摘。

「問題解決のために力と軍事的な手段を使っても問題を増幅するだけだ。この教訓は真摯(しんし)に受け止めるべきだ」と述べたという。

その上で、米国が部隊を「性急に撤退」させたことによる「深刻な悪影響」を受け、中国は新たな内戦や人道上の危機を阻止するため米政府と連携する用意があると伝えた。

一方で、「米国は中国の抑え込みや抑止を積極的に模索し中国の正当な権利や利害を損なおうとする一方で、中国の協力を期待することはできない」とくぎを刺した。

王氏は、米国が東トルキスタン・イスラム運動(ETIM)をテロ組織指定リストから除外したことについても、テロ対策のダブルスタンダード(二重基準)だと批判した。

中国は、隣国のアフガン国内でETIMが活動し、中国の新疆ウイグル自治区で分離独立を目指す可能性を警戒している。中国は同自治区で大規模収容施設を設置しており、過激思想を抑えるための職業訓練が目的と説明している。

米政府は、ETIMはもはや正式な組織としては存在しておらず、中国がウイグル族などさまざまなイスラム系民族の抑圧のために使用している広義の名称だとしている。

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2021トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【話題の記事】
・タリバン大攻勢を生んだ3つの理由──9.11以来の大転換を迎えるアフガニスタン
・タリバンが米中の力関係を逆転させる
・<カブール陥落>米大使館の屋上からヘリで脱出する「サイゴン陥落」再び


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ノーベル化学賞に北川進京大特別教授ら3人、金属有機

ワールド

ロ、トマホーク供与をけん制 米への報復検討と有力議

ビジネス

最貧国の債務問題、革新的な解決策が必要=イタリア中

ワールド

ウクライナ和平への機運、ほぼ失われた=ロシア外務次
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:中国EVと未来戦争
特集:中国EVと未来戦争
2025年10月14日号(10/ 7発売)

バッテリーやセンサーなど電気自動車の技術で今や世界をリードする中国が、戦争でもアメリカに勝つ日

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ロシア「影の船団」が動く──拿捕されたタンカーが示す新たなグレーゾーン戦略
  • 2
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 3
    トイレ練習中の2歳の娘が「被疑者」に...検察官の女性を襲った「まさかの事件」に警察官たちも爆笑
  • 4
    祖母の遺産は「2000体のアレ」だった...強迫的なコレ…
  • 5
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 6
    ウクライナの英雄、ロシアの難敵──アゾフ旅団はなぜ…
  • 7
    ヒゲワシの巣で「貴重なお宝」を次々発見...700年前…
  • 8
    【クイズ】イタリアではない?...世界で最も「ニンニ…
  • 9
    「それって、死体?...」新婚旅行中の男性のビデオに…
  • 10
    赤ちゃんの「耳」に不思議な特徴...写真をSNS投稿す…
  • 1
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 2
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレクトとは何か? 多い地域はどこか?
  • 3
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最悪」の下落リスク
  • 4
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 5
    赤ちゃんの「耳」に不思議な特徴...写真をSNS投稿す…
  • 6
    iPhone 17は「すぐ傷つく」...世界中で相次ぐ苦情、A…
  • 7
    祖母の遺産は「2000体のアレ」だった...強迫的なコレ…
  • 8
    ロシア「影の船団」が動く──拿捕されたタンカーが示…
  • 9
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 10
    更年期を快適に──筋トレで得られる心と体の4大効果
  • 1
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 2
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 3
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 4
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ…
  • 5
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に.…
  • 6
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 7
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 8
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 9
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 10
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中