最新記事

プロポーズ

プロポーズは自分で掘り当てたダイヤを手に...鉱物マニアの挑戦

Don’t Stop Digging for Love

2021年8月4日(水)19時16分
クリスチャン・リデン(米ワシントン州在住)
鉱物マニアのリデンとデジレ

見つけるコツは「探すのをやめないこと」だと、リデンは言う(左はデジレ) CHRISTIAN LIDEN

<特別な婚約指輪を贈りたかった鉱物マニアが、2.2カラットの大物と最愛の彼女を射止めるまで>

子供の頃から、アイスランドなど遠い場所まで宝石を探しに行く男たちのドキュメンタリー番組が大好きだった。要するに僕は「鉱物マニア」で、化石を掘ったりもする。

中学・高校時代はあまり女の子と縁がなかったけれど、いつか結婚するなら、人と違ったやり方にしたかった。なんで婚約指輪を店で買わなきゃならない? 宝石を自分で見つけたっていいはずだ。

2016年、21歳の僕は地元ワシントン州でよく山歩きをしていた。食事をするのはいつも同じレストランだった。デジレがウエートレスとして働いていたからだ。

あるとき店で一緒に食事をしていた男友達に彼女と話したことがないと打ち明けると、この臆病者めと挑発された。だからレシートに電話番号を書いてデジレに渡したけれど、連絡はなかった。

でも半年後に店に行くと、デジレは僕を覚えていてくれた。レシートをなくしてしまったからもう一度教えてと言うので電話番号を教え、それからずっと僕らは一緒だ。

結婚の意思が固まったのは3年前のこと。ダイヤモンドを外国で採掘して指輪を作り、その指輪を手にプロポーズする作戦をひそかに温め始めた。

一般に公開されたダイヤモンド鉱山へ

けれども外国から原石を持ち込むのは困難で、作戦は棚上げに。そんな僕に同僚が、アーカンソー州のクレーター・オブ・ダイヤモンド州立公園を教えてくれた。世界で唯一、一般に公開されたダイヤモンド鉱山なのだという。

僕はリサーチを進め、デジレが仕事でいない間に採掘用のふるいを作った。今年5月に男だけで西部を回ると言って家を出た。友人と2人でアーカンソーの州立公園に行ってテントを張り、翌日は朝から地面の砂利を洗ってふるいにかけたが収穫はなかった。

2日目は穴を掘ったが大して深く掘れなかったから、3日目はまたせっせと地面の砂利をふるいにかけた。

光る物を探して一日中砂利に目を凝らした後、ふるいにあり得ない大きさの輝きを見つけたときの驚きといったら。それは一目でダイヤと分かった。見た瞬間、体が震えた。

公園でダイヤらしき石を発見したら、鑑定士が見てくれる。鑑定士は僕の石を15分くらい、ためつすがめつ眺めてから、顕微鏡を僕にものぞかせ、2.2カラットのイエロー・ダイヤモンドだと教えてくれた。

帰宅した翌日、僕はデジレをキノコ狩りに誘った。森を歩きながら、西部の旅は噓で本当は南部アーカンソー州で土を掘っていたと白状した。

そして地面に片膝をつき、2.2カラットのダイヤを差し出した。「僕が見つけたこの石で、君に指輪を作りたい。僕と結婚してくれますか?」と尋ねた。答えはイエスだった。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

金総書記、プーチン氏に新年メッセージ 朝ロ同盟を称

ワールド

タイとカンボジアが停戦で合意、72時間 紛争再燃に

ワールド

アングル:求人詐欺で戦場へ、ロシアの戦争に駆り出さ

ワールド

ロシアがキーウを大規模攻撃=ウクライナ当局
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 2
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指すのは、真田広之とは「別の道」【独占インタビュー】
  • 3
    【世界を変える「透視」技術】数学の天才が開発...癌や電池の検査、石油探索、セキュリティゲートなど応用範囲は広大
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」と…
  • 6
    中国、米艦攻撃ミサイル能力を強化 米本土と日本が…
  • 7
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 8
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 9
    「衣装がしょぼすぎ...」ノーラン監督・最新作の予告…
  • 10
    【クイズ】世界で最も1人当たりの「ワイン消費量」が…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指すのは、真田広之とは「別の道」【独占インタビュー】
  • 4
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 5
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 6
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 7
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 8
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 9
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 10
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中