最新記事

テロ組織

カブール自爆テロ、ISIS-Kとは何者か

What Is ISIS-K? Officials Warned of Threat Ahead of Afghanistan Explosion

2021年8月27日(金)15時31分
ジェニ・フィンク
ISISの戦闘員

アフガニスタンの山岳地帯でタリバンに対抗する勢力として台頭したISIS(2015年当時の名称はISIL)は、人質の首を切断するなどの暴力で恐れられた Al Jazeera English-YouTube

<世界を震え上がらせたあの残忍なISISが戻ってきたのか? 目的は何か?>

8月26日、アフガニスタンの首都カブールの空港付近で2回の爆発があり、米軍の兵士13人とアフガニスタン人少なくとも60人が死亡。米兵18人を含め多数が負傷した。爆発に先立ち複数の国が、過激派組織「イラク・シリア・イスラム国(ISIS、自称イスラム国」系の武装勢力によるテロ攻撃の可能性があると警告していた。

米軍の撤退期限を8月31日に控え、アメリカは自国民やアフガニスタン人協力者などの大規模な国外退避作戦を展開している。こうしたなか起きた今回の爆発について、アントニー・ブリンケン米国務長官は記者団に、「ISIS-K(イスラム国ホラサン)による攻撃である可能性が高い」と述べた。

ISIS-Kの「K」は、現在のイラン、アフガニスタンやパキスタンなどの地域を指す「ホラサン(英語読みはコラサン)」に由来する。ISIS-Kは2015年にISISの分派組織として発足し、イラクとシリアのイスラム国幹部の支持を得ている。

同組織はこれまで、米本土に対する攻撃は行っていない。だが米シンクタンクの戦略国際問題研究所(CSIS)によれば、2017年1月から2018年にかけて、米軍部隊などと少なくとも250回衝突。アフガニスタンおよびパキスタンの市民に対しても、約100回の攻撃を行っている。

「打倒アメリカ」の野望

ISIS-Kは2020年5月には、カブールにある産院を攻撃したとされている。この攻撃で、新生児や母親を含む24人が死亡した。2018年にアフガニスタンで実施された議会選挙の際、選挙関連施設や警備員が攻撃された事件についても、犯行声明を出している。

国連の報告書はISIS-Kの構成員を数千人規模と推定し、タリバンやその他の武装組織内の不満分子を取り込むことができれば、とりわけ危険な存在になりかねないと警告している。

CSISはISIS-Kの野望について、中央アジアおよび南アジアにイスラム世界の指導者を戴くカリフ制国家を樹立することと、「エルサレムとホワイトハウスに(ISISを象徴する)黒旗を掲げる」ことだと指摘している。イスラエルとアメリカを打ち負かす、という意味だ。彼らはアメリカに対するローンウルフ(一匹狼)型の攻撃も呼びかけてきた。

CNNは、ISIS-Kはアフガニスタンの首都カブールに複数の構成員を擁しており、タリバンとは「不俱戴天の敵」同士だと指摘。米安全保障コンサルティング企業、ソウファン・グループの政策・調査担当ディレクターであるコリン・クラークはCNNに対し、2つの組織は政治、イデオロギーや軍事面で考え方が対立していると述べた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

韓国中銀、政策金利2.50%に据え置き 予想通り

ビジネス

英も「貯蓄から投資へ」、非課税預金型口座の上限額引

ワールド

来年のG20サミット、南ア招待しないとトランプ氏 

ビジネス

米ホワイトハウス付近で銃撃、州兵2人重体 当局はテ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ガザの叫びを聞け
特集:ガザの叫びを聞け
2025年12月 2日号(11/26発売)

「天井なき監獄」を生きるパレスチナ自治区ガザの若者たちが世界に向けて発信した10年の記録

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファール勢ぞろい ウクライナ空軍は戦闘機の「見本市」状態
  • 3
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 4
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 5
    7歳の娘の「スマホの検索履歴」で見つかった「衝撃の…
  • 6
    がん患者の歯のX線画像に映った「真っ黒な空洞」...…
  • 7
    ミッキーマウスの著作権は切れている...それでも企業…
  • 8
    あなたは何歳?...医師が警告する「感情の老化」、簡…
  • 9
    ウクライナ降伏にも等しい「28項目の和平案」の裏に…
  • 10
    【クイズ】世界で1番「がん」になる人の割合が高い国…
  • 1
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判殺到、そもそも「実写化が早すぎる」との声も
  • 2
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 5
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 6
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 7
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 8
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 9
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ…
  • 10
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中