最新記事

錯視

存在しない光が見える? デザイン会社のロゴから新たな錯視画像が誕生

2021年7月15日(木)18時45分
青葉やまと

第2のポイントは、脳の「点と点を結ぶ」性質

ウォリッシュ准教授は第2段階について、人間の目が点と点を結びたがる性質を持っているためだと説明する。「点と点を結ぶ」とは慣用句であり、より具体的には、限定的な手掛かりから意味のある全体像を推察しようとする振る舞いを意味する。

准教授はこの振る舞いの例として、「カニッツアの三角形」と呼ばれる有名な錯視パターンを例に挙げている。カニッツアの三角形は、欠けた部分のある3つの円が離れて配置されているが、それぞれの円の切り欠き部分をつなぐような正三角形があるかのように見えてしまう錯視画像だ。

aoba20210715cc.jpg

Michael W. Karlovich and Pascal Wallisch - CC BY 4.0

一部が欠けた円が偶然にも特定のパターンで並んでいると捉えるよりも、3つの円が白い三角形に一部を覆い隠されていると想定する方が自然だ。このため、脳は存在しない輪郭を想定し、三角形の図形が存在するかのように認識する。

このように人間の目は根本的に、与えられた視覚情報をもとに、より説得力のある状況を想定し、そちらを信じようとする性質がある。これが脳が「点と点を結ぶ」性質の本質だ。

星座をイメージするように......

ウォリッシュ准教授はシンチレーティング・スターバーストについて、以上の2つの現象の組み合わせで生み出されていると考えている。第1段階では周辺視野の特性により、詳細な紋様が単純な濃淡で認識され、円環上に明るい部分と暗い部分があるように錯覚する。

続く第2段階で脳が状況を理解しようとし、中心部の明るい領域と外周の明るく見える領域に何らかの説得力のあるつながりを見出そうとする。その答えが放射状に放たれる光というわけだ。中心から外側にかけて、複数のリングの明るい部分が一体となり、本来は存在しないはずの光の筋を感じることになる。

ウォリッシュ准教授はブログ記事において、たとえば星を結んで星座をイメージするように、人間の脳は不確実な情報同士を結びつけて納得できる解釈を生み出そうとする、と説明している。デザイン会社のロゴから発見されたシンチレーティング・スターバーストの錯視は、人間の無意識の想像力を示す興味深い例といえそうだ。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

再送-〔アングル〕日銀、柔軟な政策対応の局面 米関

ビジネス

3月完全失業率は2.5%に悪化、有効求人倍率1.2

ビジネス

トランプ氏一族企業のステーブルコイン、アブダビMG

ワールド

EU、対米貿易関係改善へ500億ユーロの輸入増も─
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 5
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 6
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 7
    日々、「幸せを実感する」生活は、実はこんなに簡単…
  • 8
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 9
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 10
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中