最新記事

日本経済

東京五輪は日本経済に逆風? 政治リスクも急浮上

2021年7月13日(火)11時40分

ロンバーオディエ・プライベートバンクのステファン・モニエ最高投資責任者(CIO、ジュネーブ在勤)は「日本株は年初来で出遅れているが、これは政治・パンデミック・五輪という悪材料を織り込んだ結果だ」としている。

総選挙に影響も

五輪期間中の感染者数の動向は秋の解散・総選挙に影響しかねない。五輪が感染の拡大を伴わず成功裏に終われば、政権への支持は高まるとみられている。感染の抑え込みがうまくいけば、GoToキャンペーンの再開などの財政投入への期待感が高まりやすい。

デルタ株の広がりは予断を許さないが、世界のコロナ感染に伴う死者数や重症者数は減少傾向にあリ、ワクチン普及による抑制効果との見方もある。7月後半から本格化する企業決算では、経済正常化で先行する米中での景気回復を受けてトヨタ自動車などのグローバル企業の好決算が見込まれ、前向きな見通しが伝われば相場の支援材料になりそうだ。

しんきんアセットマネジメント投信の藤原直樹運用本部長は「感染者数がピークを打ったことが見えてきて、景気敏感株が物色される流れが強まれば、日本株に海外勢の資金が入ってくるだろう」と話す。

もっとも、感染抑制に失敗した場合には、菅義偉首相の求心力が低下するリスクが警戒されそうだ。菅政権下では、知事選や4月の衆参の3選挙は事実上の敗北続きで、都議選も党内の期待に届かない結果となった。来年には参院選も控えており「選挙の顔」への逆風が生じかねない。

ロンバーオディエPBのモニエCIOは「自民党は2012年以降、選挙で頼りになる公明党と連立を組むが、菅首相の支持率は低下しており、衆院選に向けて政治的に不安定な状態が続く」との見方を示す。現在の株価水準は割高ではないがカタリストが不足し、日本株の投資判断は「アンダーウェイト(弱気)」と話している。

「海外投資家は政治リスクを一番嫌がる」と、三菱UFJMS証の藤戸氏は指摘する。財務省が公表するデータで海外勢は、6月6日の週から4週連続の売り越しで、売り越し額も週を追うごとに拡大している。

(平田紀之 取材協力:植竹知子 編集:伊賀大記、橋本浩)

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2021トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【話題の記事】
・東京五輪が無観客なら、競技をZoomでやればいい
・五輪開催へ突き進む日本政府、その特異なギャンブル性


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

インフレ鈍化「救い」、先行きリスクも PCE巡りS

ワールド

韓国輸出、5月は前年比-1.3% 米中向けが大幅に

ワールド

米の鉄鋼関税引き上げ、EUが批判 「報復の用意」

ワールド

ガザ停戦案、ハマスは修正要求 米特使「受け入れられ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岐路に立つアメリカ経済
特集:岐路に立つアメリカ経済
2025年6月 3日号(5/27発売)

関税で「メイド・イン・アメリカ」復活を図るトランプ。アメリカの製造業と投資、雇用はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシストの特徴...その見分け方とは?
  • 2
    3分ほどで死刑囚の胸が激しく上下し始め...日本人が知らないアメリカの死刑、リアルな一部始終
  • 3
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「MiG-29戦闘機」の空爆が、ロシア国内「重要施設」を吹き飛ばす瞬間
  • 4
    「ホットヨガ」は本当に健康的なのか?...医師らが語…
  • 5
    ペットの居場所に服を置いたら「黄色い点々」がびっ…
  • 6
    【クイズ】生活に欠かせない「アルミニウム」...世界…
  • 7
    「これは拷問」「クマ用の回転寿司」...ローラーコー…
  • 8
    メーガン妃は「お辞儀」したのか?...シャーロット王…
  • 9
    「ウクライナにもっと武器を」――「正気を失った」プ…
  • 10
    イーロン・マスクがトランプ政権を離脱...「正直に言…
  • 1
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「MiG-29戦闘機」の空爆が、ロシア国内「重要施設」を吹き飛ばす瞬間
  • 2
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシストの特徴...その見分け方とは?
  • 3
    3分ほどで死刑囚の胸が激しく上下し始め...日本人が知らないアメリカの死刑、リアルな一部始終
  • 4
    今や全国の私大の6割が定員割れに......「大学倒産」…
  • 5
    【クイズ】世界で最も「ダイヤモンド」の生産量が多…
  • 6
    「ウクライナにもっと武器を」――「正気を失った」プ…
  • 7
    「ディズニーパーク内に住みたい」の夢が叶う?...「…
  • 8
    ヘビがネコに襲い掛かり「嚙みついた瞬間」を撮影...…
  • 9
    【クイズ】世界で2番目に「金の産出量」が多い国は?
  • 10
    イーロン・マスクがトランプ政権を離脱...「正直に言…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 3
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 4
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 5
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 6
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 7
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
  • 8
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
  • 9
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 10
    3分ほどで死刑囚の胸が激しく上下し始め...日本人が…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中