最新記事

米政治

アメリカ二大政党制が迎えた限界...ついに第三政党の躍進へ機は熟した

IT’S TIME TO PARTY

2021年7月2日(金)17時54分
デービッド・H・フリードマン(ジャーナリスト)

差し当たりバイデン政権が上々の成果を上げていることで、政治的な二極化はひとまず沈静化している。しかし、来年の中間選挙に向けた選挙運動が本格化するのに伴い、二大政党への不満が高まり、その状況のまま24年の大統領選に突入すると、大半の専門家は予測している。

第三政党がそのような不満の受け皿になり得るのかもしれない。実際、中道系の新しい政党が必要だという声は、過去100年間で最も高まっている。二大政党に代わる新しい選択肢をつくるために動きだしている政治団体もある。

「1月の連邦議事堂乱入事件以降、私たちのウェブサイトへの訪問者数は1年前に比べて約1万倍、寄付は約2000倍に増加した」と、元共和党下院議員で現在は17年結成の独立系政党「サーブ・アメリカ・ムーブメント(SAM)」を率いるデービッド・ジョリーは言う。

24年の大統領選で第三政党出身の大統領が誕生するというのは、最も可能性が高いシナリオではないが、荒唐無稽な筋書きとも言い切れない。

そう判断できる理由はいくつかある。まず、2月にギャラップ社が発表した世論調査によると、第三政党の登場を望んでいる有権者の割合は空前の水準に達している。その割合は、民主党支持者の46%、共和党支持者の63%、無党派層の70%に上る。

共和党離れが加速している

特に共和党は、これまで盤石だった支持層のかなりの割合が第三政党に流出しかねない。州の有権者登録データによると、1月の連邦議事堂乱入事件後の数週間で、共和党員として有権者登録していた10万人以上が政党の登録を変更している。

このように共和党への支持が揺らいでいる状況を目の当たりにして、トランプとその周辺は当初、共和党を離党して「愛国者党」という新党を結成する可能性を模索した。

しかし結局、トランプはこのアイデアを放棄し、共和党を牛耳り続ける方針に転じた。24年の大統領選に自らが再出馬するか、そうでなくても共和党のキングメーカーとして君臨しようというわけだ。

共和党を支配し続けようというトランプの方針に対抗するために、共和党内の穏健派が動きだした。2月初めに約120人の共和党政治家と活動家がオンライン会議を行い、共和党の反トランプ派が離党して新党をつくる可能性を話し合った。

既にチェイニー以外にも、ミット・ロムニー上院議員やアダム・キンジンガー下院議員など、多くの穏健派有力議員が党の「トランプ化」に嫌悪感を表明している。

ジェフ・フレーク元上院議員、ロブ・ポートマン上院議員、チャーリー・デント元下院議員、パトリック・トゥーミー上院議員など、既に政界を去ったか去る予定の政治家もいる。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

神田財務官、介入有無コメントせず 過度な変動「看過

ワールド

タイ内閣改造、財務相に前証取会長 外相は辞任

ワールド

中国主席、仏・セルビア・ハンガリー訪問へ 5年ぶり

ビジネス

米エリオット、住友商事に数百億円規模の出資=BBG
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われた、史上初の「ドッグファイト」動画を米軍が公開

  • 4

    メーガン妃の「限定いちごジャム」を贈られた「問題…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    目の前の子の「お尻」に...! 真剣なバレエの練習中…

  • 7

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 8

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 9

    美女モデルの人魚姫風「貝殻ドレス」、お腹の部分に…

  • 10

    ロシア軍「Mi8ヘリコプター」にウクライナ軍HIMARSが…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 8

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 9

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 10

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 4

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中