最新記事

米政治

アメリカ二大政党制が迎えた限界...ついに第三政党の躍進へ機は熟した

IT’S TIME TO PARTY

2021年7月2日(金)17時54分
デービッド・H・フリードマン(ジャーナリスト)
下院議員総会議長を解任された共和党のリズ・チェイニー

下院議員総会議長を解任された後、メディアの取材に応じるチェイニー Kevin Dietsch/Getty Images

<共和党の「トランプ化」が止まらず、民主党の次世代指導者も極端な左派になる可能性。中道政党を望む有権者の割合は空前の水準に>

米共和党はまだしばらくの間、「トランプの党」であり続けるつもりらしい。

共和党は5月12日、党所属下院議員の会合でリズ・チェイニー下院議員を下院議員総会議長(下院共和党のナンバー3)の要職から解任することを決めた。昨年の大統領選挙で不正があったというドナルド・トランプ前大統領の根拠のない主張をきっぱり批判したことが理由だ。

この決定により、共和党はトランプと一体であり続けると宣言したに等しい。

では、トランプへの忠誠を拒んで共和党から離れたチェイニーなどの政治家たちは、次の選挙に独立系候補として、あるいは第三政党の候補者として臨む可能性があるのか。

これまでの常識では、それはあり得ない。歴史を振り返ると、独立系候補の大半は選挙で惨敗している。民主党と共和党という二大政党の力は、それほどまでに絶大なのだ。

しかしその半面、今日のアメリカ政治ではこれまでの常識が通用しなくなっていることも事実だ。過去数十年で初めて、第三政党の挑戦が惨敗に終わらない状況が出現しつつあるのかもしれない。

バイデンの再出馬には不確定要素が

カギを握るのは、ジョー・バイデン大統領の動向だ。新政権発足後、まずまずの滑り出しを見せたバイデンだが、2024年の大統領選で再選を目指すのか。3月25日に行った就任後初の記者会見では、出馬するという「見通し」を示しつつも、不確定要素があることも認めている。

もし再選されれば、バイデンは82歳という高齢で2期目の任期に入ることになる。しかも次の大統領選の前に、バイデンはまず来年の中間選挙を乗り切らなくてはならない。中間選挙で与党の民主党が議会の少数派に転落し、厳しい政権運営を強いられる可能性もある。

もしそうなれば、民主党内でカマラ・ハリス副大統領やその他の若いリーダーを大統領候補に担ごうという機運が高まっても不思議でない。

中道派のバイデンが退くと、第三政党の大統領候補が躍進する可能性が現実味を帯びてくる。民主党がバイデンより左派の人物を、共和党がトランプや同様の考え方の持ち主を大統領候補に選んだ場合、米国民は極端な二者択一を強いられる。

歴史上経験がないくらい左傾化するか、さらに右傾化するかという選択だ。

ほとんどの有権者は、そのどちらも望んでいない。「両党はかつてなく極端な立場を取るようになっている」と、進歩派の非営利団体「オープン・ラボズ」のデータ科学責任者を務めるデービッド・ショアは言う。「その一方で、既存のシステムに不満を抱く人の割合もかつてなく高まっている」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ロシア夏季攻勢、予想外の場所になる可能性も=ウクラ

ビジネス

米テスラ、テキサス州の工場で従業員2688人を一時

ビジネス

米UPS、利益が予想上回る コスト削減で需要の弱さ

ビジネス

世界EV販売は年内1700万台に、石油需要はさらに
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 2

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の「爆弾発言」が怖すぎる

  • 3

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親会社HYBEが監査、ミン・ヒジン代表の辞任を要求

  • 4

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 5

    「なんという爆発...」ウクライナの大規模ドローン攻…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 8

    ロシア、NATOとの大規模紛争に備えてフィンランド国…

  • 9

    イランのイスラエル攻撃でアラブ諸国がまさかのイス…

  • 10

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 6

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 7

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 8

    ダイヤモンドバックスの試合中、自席の前を横切る子…

  • 9

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 10

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中