最新記事

難民

難民としてアメリカに来た少年の人生を、チェスが一変させるまで

Chess Has Changed My Life

2021年6月24日(木)20時08分
タニトルワ・アデウミ(通称タニ、10歳のチェス・マスター)
チェス・マスターのタニトルワ・アデウミ

少なくとも1日8~9時間はチェスをプレーするというアデウミ(左) KAYODE ADEWUMI

<ニューヨークのホームレス施設で先生と出会い、今は史上最年少のグランドマスターを目指している>

チェスを初めて知ったのはナイジェリアにいたときだった。兄が紙の駒を作って、動きをいくつか教えてくれた。でも、そのときはチェスのことを何も知らなかったので、あまり面白いと思わなかった。

家族でナイジェリアからアメリカに難民として渡ってきたのは2017年。ある牧師さんのおかげでニューヨークのホームレス向けシェルターに入ることができた。

僕は兄と同室で、母と父は上の階の部屋だった。そこはとても清潔な場所で、人々はとても親切だった。僕はニューヨークが大好きになった。

まだホームレスシェルターにいた小学2年生のとき、チェスの先生に出会った。彼は20~30分のレッスンで駒の動きやテクニックを教えてくれた。母は僕を学校のチェスクラブに入会させた。

19年、8歳のときにニューヨーク州の児童・生徒が参加する大会に出た。結果は5勝1分け。大会に出るのは初めてだったけれど、僕はK-3(幼稚園~小学3年生)クラスで優勝した。

心の中ではとても幸せだった

優勝したことは本当にうれしくて、自分を誇りに思った。表面上は「これは1つの大会にすぎない」という態度でいたけれど、心の中ではとても幸せだった。下の階にいた母やみんなに早く会いたかった。

ウーバーの運転手をしていた父は仕事で会場にはいなかったけれど、母は大喜びですぐに父にメールで知らせた。父は州境の向こうから「スゴいぞ!」という感じの返事をくれた。

優勝のニュースは世界中に伝わり、たくさんの人が電話をかけてきた。学校のクラブと週末のハーレムで練習を続け、レーティング(チェスの強さを点数化した指標)が1000ぐらいになったとき、母と父がグランドマスター(世界最強クラスの強豪に与えられるチェスの称号)のギオルギ・カチェイシュビリと契約して、個人的にコーチングを受け始めた。

それからもっと多くの大会に参加するようなった。19年12月にフロリダ州で開かれた全米レベルの大会では、7回の対局で6回勝ち、2位に入った。小学4年生で10歳近く上の子たちと対戦した結果なので、誇りに思った。

普段、学校がある日は1日8~9時間はチェスをプレーしていると思う。学校がない日は10~11時間練習する。

チェスを本格的に始めて2年数カ月、僕は10歳と8カ月になった。今年の5月1日には、マスターの称号を得るために必要な2200のレーティングを獲得した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米労働生産性改定値、25年第4四半期は1.8%上昇

ビジネス

エネルギー高、22年より広範に定着の可能性=オラン

ワールド

パキスタン首相「米・イラン協議開催の用意」、中東紛

ワールド

米国務長官、27日のG7外相会合で中東・ウクライナ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:BTS再始動
特集:BTS再始動
2026年3月31日号(3/24発売)

3年9カ月の空白を経て完全体でカムバック。世界が注目する「BTS2.0」の幕開け

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    三笠宮彬子さまも出席...「銀河の夢か、現実逃避か」モナコ舞踏会に見る富と慈善
  • 2
    中国の公衆衛生レベルはアメリカ並み...「ほぼ国民皆保険」を達成した中国の医療保険の実態とは
  • 3
    レストラン店内で配膳ロボットが「制御不能」に...店員も「なすすべなし」の暴走モード
  • 4
    【クイズ】2年連続で「世界幸福度ランキング」で最下…
  • 5
    イランは空爆により核・ミサイル製造能力を「喪失」…
  • 6
    「日本人のほうが民度が低い」を招いてしまった渋谷…
  • 7
    表情に注目...ニコール・キッドマン、大富豪夫妻から…
  • 8
    「買ったら高いじゃん?」アカデミー賞会場のゴミ箱…
  • 9
    イラン戦争、トランプを泥沼に引きずり込む「5つの罠…
  • 10
    スペイン王室、王妃と王女の装いに見る「母から娘」…
  • 1
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期スペイン女王は空軍で訓練中、問われる「軍を知る君主」
  • 2
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え時の装いが話題――「ファッション外交」に注目
  • 3
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が発生し既に死者も、感染源は「ナイトクラブ」
  • 4
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公…
  • 5
    第6回大会を終えて曲がり角に来たWBC
  • 6
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する…
  • 7
    【衛星画像】イラン情勢緊迫、米強襲揚陸艦「トリポ…
  • 8
    【銘柄】「三菱商事」の株価に高まる期待...ホルムズ…
  • 9
    韓国製ミサイル天弓-II、イラン戦争で96%迎撃の衝撃 …
  • 10
    「マツダ・日産・スバル」が大ピンチ?...オーストラ…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 5
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 6
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 7
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 8
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 9
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 10
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中