最新記事

アメリカ

アメリカの孤立化ではっきりした、「頼れる大国はアメリカだけ」という事実

AMERICA REMAINS INDISPENSABLE

2021年6月9日(水)11時56分
ヨシュカ・フィッシャー(元ドイツ外相)

まず、2国家共存がもはや現実的に見えなくとも、それを放棄すれば激しい衝突を招くということ。2つ目に、パレスチナ人とイスラエル国内のアラブ系住民は、和平交渉から締め出される状況に黙ってはいないということ。

3つ目に、イスラエルの占領は永久には続かないということ。そして4つ目に、少なくとも世界の大国の役割を保ちたいのならば、アメリカは興味を失ったからといってこの地域を簡単に見捨てることなどできないということだ。

1990年代の旧ユーゴスラビアと同じく現在の中東地域でも、和平を実現できる、あるいは少なくとも全面的な戦争を止められる立場にいる大国はアメリカだけだ。ロシアもかつてはその役割を狙ったが、果たせなかった。

中国は、中東でのアメリカの立場を引き受ける気もなければその力もない。ヨーロッパはもはや戦力として期待できず、影響力拡大を狙うトルコにしても力不足。イランやサウジアラビアはあくまでアラブ世界での覇権を目指すばかりで、イスラエルの関心はもっぱら自国防衛だ。

となると、やはり残るのはアメリカだけ。政治的にも技術、経済、軍事的にも中東に影響力を及ぼせる国はアメリカをおいてほかにない。国際秩序にとって最悪なのは、アメリカが孤立の道を進むことだ。トランプ時代が既にその危険性を証明したが。

©Project Syndicate

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米ISS、コアウィーブによる90億ドル規模の買収計

ワールド

アラスカLNG事業、年内に費用概算完了=米内務長官

ワールド

アングル:高市政権、日銀との「距離感」に変化も 政

ワールド

世界安全保障は戦後最も脆弱、戦わず新秩序に適応をと
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
2025年10月28日号(10/21発売)

高齢者医療専門家の和田秀樹医師が説く――脳の健康を保ち、認知症を予防する日々の行動と心がけ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 2
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 3
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多い県」はどこ?
  • 4
    本当は「不健康な朝食」だった...専門家が警告する「…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    TWICEがデビュー10周年 新作で再認識する揺るぎない…
  • 7
    米軍、B-1B爆撃機4機を日本に展開──中国・ロシア・北…
  • 8
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 9
    【インタビュー】参政党・神谷代表が「必ず起こる」…
  • 10
    若者は「プーチンの死」を願う?...「白鳥よ踊れ」ロ…
  • 1
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号返上を表明」も消えない生々しすぎる「罪状」
  • 2
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多い県」はどこ?
  • 3
    まるで『トップガン』...わずか10mの至近戦、東シナ海で「中国J-16」 vs 「ステルス機」
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    フィリピンで相次ぐ大地震...日本ではあまり報道され…
  • 6
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 7
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 8
    日本で外国人から生まれた子どもが過去最多に──人口…
  • 9
    本当は「不健康な朝食」だった...専門家が警告する「…
  • 10
    「心の知能指数(EQ)」とは何か...「EQが高い人」に…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 3
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に...「少々、お控えくださって?」
  • 4
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 7
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 8
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中