最新記事

スペースデブリ

宇宙ゴミが国際宇宙ステーションのロボットアームに衝突

2021年6月1日(火)18時50分
松岡由希子

国際宇宙ステーションのロボットアームにスペースデブリが衝突した痕跡が見つかった  CSA/NASA

<増加するいっぽうのスペースデブリ。国際宇宙ステーション(ISS)に搭載されているロボットアームにスペースデブリが衝突した痕跡が見つかった>

1957年に世界初の人工衛星「スプートニク1号」が打ち上げられて以降、これまでに約1万1670個の衛星が地球周回軌道に送り込まれ、特定のミッションを行うことなく軌道を浮遊する「スペースデブリ(宇宙ゴミ)」が増加している。

欧州宇宙機関(ESA)によると、2021年5月20日時点で、その数は10センチ以上のものが3万4000個、1センチから10センチまでのものが90万個、1ミリから1センチまでが1億2800万個と推定され、その総質量は9400トンを超えている。

ISSのロボットアームに衝突した痕跡が見つかった

カナダ宇宙庁(CSA)は5月28日、「12日の定期検査の際、国際宇宙ステーション(ISS)に搭載されている『カナダアーム2』でスペースデブリが衝突した痕跡が見つかった」と発表した。

「カナダアーム2」は2001年に国際宇宙ステーションに搭載された、アームの長さ17メートル、重さ1497キロのロボットアームだ。その両端にはラッチ式エンドエフェクタ(LEE)が装備され、国際宇宙ステーションのメンテナンスや物資、機器などの移動、補給機とのドッキングのサポートなどを担っている。

カナダ宇宙庁とアメリカ航空宇宙局(NASA)の専門家チームは、痕跡が見つかった領域の画像を分析し、衝突の影響を評価。損傷はアームと耐熱ブランケットのごく一部に限られており、「カナダアーム2」の運用には影響がないという。事前の計画どおり、作業を継続してすすめる方針だ。

小さなサイズのデブリは追跡されていない

2016年には、国際宇宙ステーションに搭載されている欧州宇宙機関(ESA)の観測用モジュール「キューポラ」のガラス窓に微小デブリが衝突し、直径7ミリの丸い傷がつくという事象も発生している。

Hubble0601.jpg

ハッブル宇宙望遠鏡に残された衝突の痕跡 (NASA)

世界中の宇宙機関がこのスペースデブリ問題を認識しており、23,000以上のソフトボール大以上のデブリは地球低軌道で追跡されている。しかし、それ以下のサイズのものは、小さすぎて追跡できていない。それでも、衝突する場合は、相対速度が秒速10~15kmの超高速衝突となり、金属板を突き破るなどの重大な損傷を与える可能性がある。

欧州宇宙機関のティム・フローレス氏は「宇宙での運用がもたらす科学、技術、データの恩恵を受け続けるためには、宇宙船の設計や運用において、スペースデブリ軽減に向けた既存のガイドラインをしっかりと遵守することが不可欠だ」と指摘し、宇宙の持続可能な利用の必要性を訴えている。

Space Debris-ESA

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

インドの対米通商交渉、農業は「譲れない一線」=財務

ビジネス

飲食料品の値上げ、7月は2105品目で前年比5倍=

ワールド

米上院、税制・歳出法案の審議進める 30日に修正案

ワールド

戦争終結に向けた協議のペースは米とウクライナ次第=
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本のCEO
特集:世界が尊敬する日本のCEO
2025年7月 1日号(6/24発売)

不屈のIT投資家、観光ニッポンの牽引役、アパレルの覇者......その哲学と発想と行動力で輝く日本の経営者たち

メールマガジンのご登録はこちらから。
メールアドレス

ご登録は会員規約に同意するものと見なします。

人気ランキング
  • 1
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で大爆発「沈みゆく姿」を捉えた映像が話題に
  • 2
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた発見の瞬間とは
  • 3
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。2位は「身を乗り出す」。では、1位は?
  • 4
    メーガン妃への「悪意ある中傷」を今すぐにやめなく…
  • 5
    突然ワニに襲われ、水中へ...男性が突いた「ワニの急…
  • 6
    普通に頼んだのに...マクドナルドから渡された「とん…
  • 7
    砂浜で見かけても、絶対に触らないで! 覚えておくべ…
  • 8
    自撮り動画を見て、体の一部に「不自然な変形」を発…
  • 9
    突出した知的能力や創造性を持つ「ギフテッド」を埋…
  • 10
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々と撤退へ
  • 3
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で大爆発「沈みゆく姿」を捉えた映像が話題に
  • 4
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 5
    定年後に「やらなくていいこと」5選──お金・人間関係…
  • 6
    夜道を「ニワトリが歩いている?」近付いて撮影して…
  • 7
    突然ワニに襲われ、水中へ...男性が突いた「ワニの急…
  • 8
    サブリナ・カーペンター、扇情的な衣装で「男性に奉…
  • 9
    飛行機内で「最悪の行為」をしている女性客...「あり…
  • 10
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の…
  • 6
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 7
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 8
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 9
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 10
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中