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「宿題なし・定期テストなし」でも生徒が勝手に勉強する公立中学校の『肯定感の育て方』

2021年6月10日(木)18時05分
工藤 勇一(横浜創英中学・高等学校校長) *PRESIDENT Onlineからの転載

工藤校長が親に授ける子供の自主性を育てるコツ2

Q:「ゲームやユーチューブなどの誘惑に打ち勝つにはどうしたらいい?」

子供がゲームやユーチューブばかりで困っている、という話はよく聞きますが、具体的に何が問題なのでしょうか? 子供に伝える前に、まず親自身が「なぜ困っているのか」について自問自答してみてください。

勉強時間が減っているからでしょうか、家族の会話が奪われているからでしょうか、暴力的なコンテンツだから、睡眠時間が減っているから、さまざまな理由が思い浮かぶはずです。まずは親の悩みの本当の理由を分析してみてください。

睡眠時間が減って遅刻したり、成績が下がって自身が落ち込んでいるといった問題を子供の側も認識している場合には、解決は容易かもしれません。

たとえば、睡眠不足の場合、なかなか起きられない子に、「どうして起きるのが遅かったの?」と聞いてみてください。すると「昨日の夜ね、ずっとゲームし続けちゃったんだよね」って。「それで昨日は寝るのが遅くなっちゃったんだ」って。日頃から叱られない安心・安全な環境だったら子供はちゃんと答えてくれます。

さらに「そうか、どうしてゲームがやめられなかったの?」と問うと、「楽しすぎて、集中しすぎて、やめられなかったんだ。時間がわかんなかったんだよね」と理由を教えてくれるでしょう。そこで「そうだったんだ。楽しかったんだね。時間がわかるようにするにはどうすればいいのかな?」と徐々に解決策に向けて子供に話を聞くんです。

子供も「自分で何か工夫してみる。目覚ましでもかけてみようかなあ」といった形で何か方法を考えるはずです。もちろん、その工夫が失敗することだってあります。でもその試行錯誤こそが大事なのです。

図表:台湾の天才IT大臣を育てた「ソクラテス式問答法」

子供を伸ばすなら、ひたすら質問を繰り返す「ソクラテス式問答法」

今挙げた、ひたすら質問を繰り返す対話の仕方を「ソクラテス式問答法」と言うそうですが、小さな自己決定の繰り返しは自己肯定感を必ず高めてくれます。台湾のデジタル担当大臣、オードリー・タン氏は、小学生の頃から父親とこうした会話をしていたそうです。

プレジデントFamily2021春号親は、自ら考えた工夫が失敗することも含め子供を肯定してやることが大切です。ついつい私たち大人は反省を求めてしまいます。もちろん自らの行動を振り返ることは大切なことですが、強いられた反省は、自分を責めることを覚えさせます。劣等感を植え付けます。

だから、"反省"という精神論ではなく、工夫するプロセスをほめて、あえて助けるのであれば、続けられる仕掛けを親子で一緒に考えてみてください。話を元に戻すと、ゲームに夢中なことで起きている問題が解決できるのであれば、ゲームを無理にやめさせる必要はありません。子供の行動を否定せず、親も子供もありのままを認めて、幸せな親子関係を築くことが一番です。

A:まず親が「なぜ夢中になってはいけないのか」を考えて

工藤 勇一(くどう・ゆういち)

横浜創英中学・高等学校校長
1960年山形県鶴岡市生まれ。東京理科大学理学部応用数学科卒。山形県公立中学校教員、東京都公立中学校教員、東京都教育委員会、目黒区教育委員会、新宿区教育委員会教育指導課長等を経て、2014年から千代田区立麹町中学校長。2020年4月1日より横浜創英中学・高等学校校長。教育再生実行会議委員、経済産業省「未来の教室」とEdTech研究会委員等、公職を歴任。著作に『学校の「当たり前」をやめた。―生徒も教師も変わる! 公立名門中学校長の改革』(時事通信社)、『子どもが生きる力をつけるために親ができること』(かんき出版)など。

※当記事は「PRESIDENT Online」からの転載記事です。元記事はこちら
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