最新記事

サイエンス

塩基配列に「Z」を持つウイルスが、多数存在した

2021年5月20日(木)19時00分
松岡由希子
バクテリオファージウイルス

細菌を攻撃するバクテリオファージウイルス iLexx - iStock

<生物の細胞内にあるDNAの塩基は、アデニン(A)、チミン(T)、グアニン(G)、シトシン(C)の4種類と考えられているが、特殊な塩基を含んだDNAを持つウイルスが多数いることが発見された>

生物の細胞内にあるDNA(デオキシリボ核酸)の塩基は、一般に、アデニン(A)、チミン(T)、グアニン(G)、シトシン(C)の4種類と考えられている。しかしこのほど、アデニンの代わりに「2-アミノアデノシン(Z)」を組み込むDNAを持つウイルスについて、3本の研究論文が学術雑誌「サイエンス」で相次いで発表された。この特殊なDNAは「Zゲノム」と呼ばれている。

「Z・T・G・C」のDNAを持つウイルスが発見

1977年、アデニンが存在しない代わりに「2-アミノアデノシン」を含むDNAを持つシアノファージ(藍藻に感染するウイルス)「S-2L」が初めて発見された。通常は「A・T・G・C」からなるDNAをもつが、このウイルスは「Z・T・G・C」を基本に遺伝情報が描かれていた。しかし、それ以降、同様の塩基からなるDNAを持つ生物やウイルスは見つかっていなかった。

「Zゲノム」の理由として、ウイルスの自己防御が指摘されている。アデニンとチミンの間には2本の水素結合ができる一方、「2-アミノアデノシン」は、その対であるチミンと3本の水素結合を形成し、これによって「Zゲノム」はより強固となる。しかし、その詳しい生合成や働きなどについては、これまでほとんど解明されていない。

天津大学を中心とする中国の研究チームと仏パスツール研究所の研究チームは、「PurZ」と「PurB」と呼ばれる酵素によって「2-アミノアデノシン」が生成されることを示した。

Zゲノムのバクテリオファージは200種も存在した

この研究成果をふまえ、仏パリ=サクレ大学の研究チームでは、特殊な酵素「DpoZ」が「2-アミノアデノシン」のDNAへの組み込みを担っていることを明らかにしている。また、ゲノム配列データベースでこれらの酵素に関連する配列を調べたところ、「Zゲノム」のDNAを持つバクテリオファージ(細菌や古細菌に感染して複製するウイルス)は200種も存在することがわかった。

「『Zゲノム』は一般的な細胞機構に適合するのか」など、「Zゲノム」について解明されていない点は、まだ多い。また、1969年に南極に落下した隕石から「Zゲノム」が発見されていることから、生命の起源や宇宙生物学の研究においても関心を集めている。

Are Viruses Aliens?

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

台湾国民党主席、南京で孫文の墓所訪問 中国との和解

ビジネス

街角景気3月は6.7ポイント低下、中東情勢でマイン

ワールド

習主席、「中国流」サービス業目指す 需要主導と技術

ワールド

北朝鮮が弾道ミサイル発射と日韓が発表、前日に続き
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプの大誤算
特集:トランプの大誤算
2026年4月14日号(4/ 7発売)

国民向け演説は「フェイク」の繰り返し。泥沼化するイラン攻撃の出口は見えない

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 2
    「南東部と東部の前線で480平方キロ奪還」とウクライナ軍司令官 ロシア軍「⁠春の​攻勢」は継続
  • 3
    「地獄を見る」のは米国か──イラン地上侵攻なら革命防衛隊と消耗戦に
  • 4
    米軍が兵器を太平洋から中東に大移動、対中抑止に空白
  • 5
    韓国、生理用品無償支給を7月から開始 靴の中敷きで…
  • 6
    「王はいらない」800万人デモ トランプ政権への怒り…
  • 7
    「高市しぐさ」の問題は「媚び」だけか?...異形の「…
  • 8
    【後編】BTS再始動、3年9カ月の沈黙を経て──変わる音…
  • 9
    人口減の自治体を救う「小さな浄水場」──誰もが常に…
  • 10
    5日間の寝たきりで髪が...ICUに入院した女性を襲っ…
  • 1
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 2
    イラン戦争の現実...アメリカとイスラエル、見え始めた限界
  • 3
    「考えの浅い親」が子どもに言ってしまっている口ぐせ・ワースト1
  • 4
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅…
  • 5
    「南東部と東部の前線で480平方キロ奪還」とウクライ…
  • 6
    攻撃開始日も知っていた?──イラン戦争を巡る巨額取引…
  • 7
    なぜイスラエルは対イラン戦争を支持するのか...「イ…
  • 8
    【銘柄】イラン情勢で一躍脚光の「NEC」 防衛・宇宙…
  • 9
    「地獄を見る」のは米国か──イラン地上侵攻なら革命…
  • 10
    米軍が兵器を太平洋から中東に大移動、対中抑止に空白
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 4
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅…
  • 5
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...…
  • 6
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 7
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 8
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 9
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 10
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中