最新記事

インド

コロナで親を失った子供たち 苦しむ家族を看取り、孤立し、人身売買の被害者に(インド)

INDIA’S NEW COVID ORPHANS

2021年5月27日(木)12時00分
ウマル・ソフィ(デリー在住ジャーナリスト)
ワクチン接種の列に並ぶインドの親子

感染拡大のインドではコロナ孤児が増加(ワクチン接種の列に並ぶ親子) AP/AFLO

<猛威を振るう「第2波」で30~40代の死亡が増加、まだ幼い子供が独りぼっちになるケースも珍しくない>

新型コロナウイルス感染症の感染第2波に見舞われているインドでは、1日当たりの新規感染者の報告が40万人を突破し、深刻な被害が生じている。新型コロナにより家族を亡くした人も膨大な数に上る。

専門家によれば、第2波の致死率は昨年の第1波と変わらないとのことだが、インド政府が公表しているデータによれば、30~40代の致死率は今回のほうが明らかに高い。30~40代と言えば、幼い子供を育てている人が多い年齢層だ。

そのため、インドでは最近、親を亡くす子供が増えていることが問題になっている。親の死により、養ってくれる人が誰もいなくなった子供もいるという。その結果、未成年の女の子がすずめの涙ほどの賃金で働くケースも見られる。

精神的ダメージを被った子供たちを支援するインドのNGO「プロトサハン」の創設者であるソナル・シンが筆者の取材に語ったところによれば、この数カ月の状況はとりわけ悲惨だ。

「スラム地区では、母親が新型コロナウイルス感染症で死亡した後、父親に育児放棄される子供たちがいる」と、シンは言う。

「そのような子供たちは安い賃金で過酷な労働をする羽目になる。政府が支援の手を差し伸べていないので、自分自身と弟や妹を食べさせるためには、そうした仕事をやらざるを得ない」

失業した父親からの性的虐待も

シンによれば、コロナ禍の影響で職を失った父親が未成年の娘を性的に虐待するケースもある。

「昼間は母親が仕事で留守にしていて、粗末な家で一日中、職のない父親と娘が一緒に過ごしている」と、シンは指摘する。「私が話を聞いた多くの女の子は父親から性的虐待を受けていたが、虐待を告発したくないと言う。声を上げて家を追い出されるのを恐れているからだ」

インド政府によれば、首都デリーでは住人の3人に1人が新型コロナウイルスに感染している。それに伴い、14歳未満の子供の多くが新型コロナで家族を失っている。

新型コロナで家族を亡くして独りぼっちになった子供に関するSOS通報が増えていると、デリー児童権利保護委員会の責任者を務めるアヌラグ・クンドゥは取材に対して語った。通報の件数は、取材前の数日間で30件以上に上ったという。

親を失った子供の世話をする人が誰もいない場合もあると、クンドゥは言う。ほとんどの場合は、片方の親が新型コロナで死亡し、もう片方の親が入院中というケースだが、シングルマザーだった母親が死亡し、子供が孤児になったケースもある。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

英財務相が予算案発表、増税260億ポンド超 財政余

ワールド

アングル:ウクライナ和平案に与党内で厳しい声、トラ

ワールド

中国、米国の中米国民ビザ制限を非難 「国連憲章に違

ビジネス

カレンダー市中国債170兆円台後半へ、2年・5年債
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ガザの叫びを聞け
特集:ガザの叫びを聞け
2025年12月 2日号(11/26発売)

「天井なき監獄」を生きるパレスチナ自治区ガザの若者たちが世界に向けて発信した10年の記録

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファール勢ぞろい ウクライナ空軍は戦闘機の「見本市」状態
  • 3
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 4
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 5
    7歳の娘の「スマホの検索履歴」で見つかった「衝撃の…
  • 6
    がん患者の歯のX線画像に映った「真っ黒な空洞」...…
  • 7
    ミッキーマウスの著作権は切れている...それでも企業…
  • 8
    あなたは何歳?...医師が警告する「感情の老化」、簡…
  • 9
    ウクライナ降伏にも等しい「28項目の和平案」の裏に…
  • 10
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ…
  • 1
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判殺到、そもそも「実写化が早すぎる」との声も
  • 2
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 5
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 6
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 7
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 8
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 9
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ…
  • 10
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中