最新記事

東京五輪

日本への米渡航中止勧告、豪チーム陽性、外堀も埋まる東京五輪

Olympics Doubts Grow as Us Warns Against Travel to Japan Over COVID Spike

2021年5月25日(火)15時33分
キャサリン・ファン
陸上の五輪テスト大会で感染対策を確認する医療従事者(5月9日、東京・国立競技場)

陸上の五輪テスト大会で感染対策を確認する医療従事者(東京・国立競技場)Issei Kato-REUTERS

<米疾病対策センター(CDC)は、今の日本の状況では、ワクチン接種が済んだ渡航者でも変異株に感染するリスクがあるとし、「すべての」渡航を避けるよう勧告した>

アメリカが日本への渡航警戒レベルを引き上げ、米国民に渡航中止を勧告した。日本は現在、新型コロナウイルスの感染拡大がこれまでで最も深刻な「第4波」に直面しており、アメリカの今回の決定を受けて、夏の東京五輪開催が可能なのかを疑問視する声が高まっている。

米国務省は24日、国民向けの海外渡航警戒レベルにおいて、日本を4段階のうち最も厳しい「レベル4:渡航の中止を求める」に引き上げた。スリランカの警戒レベルも「レベル4」に指定し、カリブ海の島国アンティグア・バーブーダの警戒レベルは「レベル3:渡航の再検討を求める」に引き下げた。

米疾病対策センター(CDC)は24日、新たに発表したガイダンスの中で「日本への全ての渡航を避けるべきだ」と指摘。その理由として「現在の日本の状況では、ワクチンの接種が完了した旅行者であっても、新型コロナウイルスの変異株に感染したり感染を拡大させたりするリスクがある」からだと説明した。

この渡航中止勧告は、東京五輪の開催がわずか2カ月後に迫るタイミングで発表された。既にパンデミックの影響で1年延期されている東京五輪は、7月23日に開幕の予定だ。

医師数千人が五輪中止を呼びかけ

東京五輪については、全ての参加者にとっての安全を最優先する原則にのっとり、既に海外からの観客を受け入れない決定が下されているが、世界各国から何万人ものアスリートやサポートスタッフが参加する見通しだ。

日本では新型コロナウイルスの感染再拡大で医療体制がひっ迫しており、政府に対して、東京五輪の中止または再延期を求める圧力が高まっている。

5月中旬には、何千人もの医師が所属する複数の医師組織が、政府に対して東京五輪の中止を呼びかけた。日本国民の多くが同様に中止を支持していることも、複数の世論調査によって示されている。

大阪医科薬科大学病院の救急医療部の責任者である高須朗は、ロイター通信に対して、オリンピックが開催されれば新たな、より感染力の強い変異株が流入するおそれがあると指摘した。日本政府は現在、東京都をはじめとする9都道府県に発令している緊急事態宣言の延長を検討している。

「オリンピックとなれば、世界中から7万人ないし8万人のアスリートや人々が日本にやって来る。これが夏にまた大変な事態を引き起こす可能性がある」と高須は述べた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米中貿易枠組み合意、軍事用レアアース問題が未解決=

ワールド

独仏英、イランに核開発巡る協議を提案 中東の緊張緩

ワールド

イスラエルとイランの応酬続く、トランプ氏「紛争終結

ワールド

英、中東に戦闘機を移動 地域の安全保障支援へ=スタ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 2
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 3
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されずに「信頼できない人」を見抜く方法
  • 4
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 5
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 6
    構想40年「コッポラの暴走」と話題沸騰...映画『メガ…
  • 7
    逃げて!背後に写り込む「捕食者の目」...可愛いウサ…
  • 8
    「結婚は人生の終着点」...欧米にも広がる非婚化の波…
  • 9
    4年間SNSをやめて気づいた「心を失う人」と「回復で…
  • 10
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 5
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 6
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 7
    ふわふわの「白カビ」に覆われたイチゴを食べても、…
  • 8
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 9
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 10
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中