最新記事

ワクチン

ワクチン供給の憂いなし...モンゴルの戦略的外交が導いた成功モデル

A Vaccine Success Story

2021年5月14日(金)18時48分
ボロル・ハジャブ(米インディアナ大学ブルーミントン校モンゴル協会所属研究者)
チンギス・ハーンの像

RPBMedia-iStock

<ロシアや中国、インドも協力。長年の多角的外交政策が調達ルートを支える>

世界各国が新型コロナワクチン接種に取り組むなか、好成績を収めているのがモンゴルだ。既に国民の59.1%がワクチン接種済み(5月6日時点)。累計接種回数は約194万6350回に達した。

モンゴルが展開してきた多角的外交政策はここへきて、極めて有益な「ワクチン外交」の実を結んでいる。

新型コロナのパンデミック(世界的大流行)宣言後、モンゴルは10カ月もの間、国内感染件数ゼロを続けたが、今春になって急増。合計感染者数は約4万4000人、死者数は160人に上る。

2011年に掲げた多方面外交

モンゴル政府はワクチン接種の促進に力を入れてきたものの、国内では賛否両論が渦巻いていた。新型コロナ対応への批判が高まり、今年1月には内閣が総辞職している。

2011年に決定した新たな外交政策構想で、モンゴルは多方面外交を掲げた。その姿勢はワクチン外交の面で大きな成果を上げ、複数ルートでのワクチン調達を実現した。

同国外務省によると、これまでにCOVAX(新型コロナワクチンの公平な分配を目指す国際的枠組み)を通じて受給した英アストラゼネカ、および米ファイザーのワクチンは計260万540回分。ロシアや中国との戦略的協力関係も功を奏して、ほかの途上国よりはるかに迅速にワクチンを入手できてもいる。中国は2月後半、シノファーム製ワクチン30万回分をモンゴルに寄付。5月初旬には、ロシア製のスプートニクV計15万1200回分が到着した。

モンゴルが「第3の隣国」に位置付ける他の国々も座視してはいなかった。

在モンゴル米大使館の報告によると、米国際開発庁(USAID)は「モンゴル政府の新型コロナ対策を支援する45万ドル規模のプログラム」を開始した。これにより、アメリカの対モンゴル新型コロナ関連援助額は合計400万ドル近くに達するという。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

アシックス、プーマ買収に関心との報道に「そのような

ビジネス

鉱工業生産10月は自動車増産で前月比1.4%上昇、

ビジネス

完全失業率10月は2.6%で横ばい、有効求人倍率は

ビジネス

小売販売額10月は前年比1.7%増、家電増・食品マ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ガザの叫びを聞け
特集:ガザの叫びを聞け
2025年12月 2日号(11/26発売)

「天井なき監獄」を生きるパレスチナ自治区ガザの若者たちが世界に向けて発信した10年の記録

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファール勢ぞろい ウクライナ空軍は戦闘機の「見本市」状態
  • 3
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果のある「食べ物」はどれ?
  • 4
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 5
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 6
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体…
  • 7
    がん患者の歯のX線画像に映った「真っ黒な空洞」...…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    「攻めの一着すぎ?」 国歌パフォーマンスの「強めコ…
  • 10
    7歳の娘の「スマホの検索履歴」で見つかった「衝撃の…
  • 1
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 2
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 3
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やってはいけない「3つの行動」とは?【国際研究チーム】
  • 4
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 5
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 6
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 7
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 8
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 9
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベー…
  • 10
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中