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米トルコ関係

トルコの歴史問題「アルメニア人虐殺」をバイデンが「認定」した意味

Turkish Official Slams Biden for Calling Atrocities Against Armenians 'Genocide'

2021年4月26日(月)18時30分
ニコール・フォラート

アメリカの連邦議会議員たちもソーシャルメディアで声明に反応した。

「歴史的事実を認めることで、バイデン大統領は真実と人権はアメリカの外交政策の最重要事項であるというシグナルを世界に送っている」テッド・リウ下院議員(民主党)はツイートした。

「真実を語ることと、不当行為をきちんと認めることは、癒やしに向けた最も重要なステップだ」と、アレクサンドリア・オカシオコルテス下院議員(民主党)は述べた。「アルメニア人ジェノサイドの認定は遅すぎたくらいで、一緒に前に進む中で、被害に遭った家族やコミュニティにこの日が多少なりとも平和をもたらすことになることを祈る」

アダム・シフ下院議員(民主党)はこうツイートした。「長年にわたるトルコによる脅しや脅迫、アルツォフ(ナゴルノ・カラバフのこと。アゼルバイジャン領内だがアルメニア人が多く住む)の人々に対する血みどろの戦争、数多くの悲嘆や失望を経て、バイデン大統領が力を持つ者(トルコ)に真実を言ってくれたことに感謝する」

もっともバイデンが国際開発庁(USAID)長官に指名しているサマンサ・パワーによれば、アルメニア人ジェノサイド認定に対してこれまで、議員からの一貫した支持があったわけではない。パワーはバイデンの声明を受け、アメリカ政府によるアルメニア人ジェノサイドの公式認定が遅れた歴史的経緯についてツイッターで解説した。

パワーによれば、トルコ駐在のアメリカ大使だったヘンリー・モーゲンソーが本国政府に「アルメニア人への迫害は前例のない規模と思われる」と知らせたのは1915年7月のことだった。

「モーゲンソーは『アルメニア民族を弾圧する組織的な計画』への対応を求めて切迫した訴えを繰り返したが、アメリカ政府は無視した。モーゲンソーはトルコ当局にも異議を唱えたが、当時の内相は無分別にもこう返答した。『あのキリスト教徒たちをわれわれのやりたいように始末させてくれないかね?』」

「あなた(バイデン)のメッセージにより、アメリカにおけるアルメニア人ジェノサイド認定のプロセスが完了したと言わせていただきたい」とアルメニアのパシニャン首相は述べた。

だが今回の認定により、対トルコ関係がバイデンの今後の外交政策上の障害となる可能性も出てきた。バイデンは23日、トルコのレジェップ・タイップ・エルドアン大統領と就任後初の電話会談を行い、アルメニア人ジェノサイドを認定する声明を出す意向を伝えたという。

だがエルドアンはコメントしていない。第1次世界大戦中はトルコ人とアルメニア人の両方が殺害されたとしてジェノサイドへの言及自体を拒否しているのだ。一方アメリカは、2016年にトルコで起きた流血のクーデター未遂事件の首謀者とされるイスラム教指導者、フェトフッラー・ギュレンのトルコへの身柄引渡しを拒んでいる。

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