アフガンの戦場から米兵が去った後、殺人マシンによる「永続戦争」が残る

No End To Forever Wars

2021年4月20日(火)18時58分
ウィリアム・アーキン(ジャーナリスト、元陸軍情報分析官)

210427P34soldiers_AFG_02.jpg

2012年当時、アフガニスタン南部でパトロールを行う米軍兵士 BAZ RATNERーREUTERS


新たな戦争マシンの登場

最も重要なのは、アフガニスタンでの戦争を支える仕組みの大部分が「安全」な国にあることだ。中東やヨーロッパのどこかにあり、アメリカ本土にもある。

そして、こうした戦争マシンをつなぐのがグローバルな情報ネットワークだ。これを通じて大量の情報が収集・処理・共有され、世界中どこでも標的を見つけ出し、攻撃を仕掛けられるシステムが維持されている。

途方もないネットワークだが、これには世界中の国の半分が関与している。1つのハブ(巨大な司令部と情報センターで構成される)から無数のスポークが延び、中東や南アジア、さらにはアフリカまでもカバーしている。この仕組みのことはほとんど理解されていないし、ほとんど目に見えず、実に強靱で効率的だ。4人のアメリカ大統領が戦争の終結を模索している間も、このネットワークはどんどん成長してきた。

この新たな戦争マシンこそが永続戦争の正体だ。このシステムは、アメリカが日常的に爆撃や殺害を実行している約20カ国で構成されている。このアメリカモデルでテロリストを殺害するのなら、地上部隊の現地配備はほとんど必要ない。だから地上部隊は「撤退」させてもいい。

こうして永続戦争は見えない場所で続くが、戦場で死傷する兵士はわずかだ。戦術が変わり、遠隔攻撃が増えたからだ。そして人的な犠牲が少なければ、国民はどんどん戦争に無関心になる。

この混沌とした世界で、アメリカは今もおそらく10の国で殺人や爆撃を行っている。確実に知られているのはアフガニスタン、イラク、シリア、パキスタン、ソマリア、イエメンだ。時々知らされるのはリビア、ニジェール、マリ、ウガンダ。あまり知られていないのはブルキナファソ、カメルーン、チャド、レバノン、ナイジェリア。そしてフィリピン、中央アフリカ共和国、エチオピア、エリトリア、ケニア、タイでの活動も、まれに伝えられる。

これら21カ国以外にも、アメリカの特殊部隊は約70の国に展開している。彼らは単独で、あるいは同盟国と協力して活動し、時にはテロリストと戦い、時には国際的な犯罪組織と戦う。情報を収集し、将来の軍事行動に備えているだけのこともある。

それらの国々の戦争の中心、つまり永続戦争マシンの中心にあるのは中東地域に存在するハブだ。戦闘とは無縁で安全と想定される国々に、司令部と基地が設けられている。例を挙げればヨルダンやクウェート、バーレーン、アラブ首長国連邦、カタール、オマーン、サウジアラビア、ジブチといった諸国に、司令部の施設と空軍および海軍の主力戦闘基地がある。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米GDP、第1四半期は+1.6%に鈍化 2年ぶり低

ビジネス

ロイターネクスト:為替介入はまれな状況でのみ容認=

ビジネス

ECB、適時かつ小幅な利下げ必要=イタリア中銀総裁

ビジネス

トヨタ、米インディアナ工場に14億ドル投資 EV生
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    今だからこそ観るべき? インバウンドで増えるK-POP非アイドル系の来日公演

  • 3

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗衣氏への名誉棄損に対する賠償命令

  • 4

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 5

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 6

    未婚中高年男性の死亡率は、既婚男性の2.8倍も高い

  • 7

    やっと本気を出した米英から追加支援でウクライナに…

  • 8

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 9

    自民が下野する政権交代は再現されるか

  • 10

    ワニが16歳少年を襲い殺害...遺体発見の「おぞましい…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 9

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 4

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこ…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 9

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中