最新記事
SDGsパートナー

「切られても、もう一度咲く」――近藤印刷が挑む、伐採された桜の再生プロジェクト「さくらのしおり」

2025年11月28日(金)11時00分
ニューズウィーク日本版編集部SDGs室 ブランドストーリー
「切られても、もう一度咲く」――近藤印刷が挑む、伐採された桜の再生プロジェクト「さくらのしおり」

桜のチップを茶葉用の袋に入れ、白い紙とともに水へ。乾燥させると、幹や枝からでも淡い桜色がにじみ出る

<企業印刷の現場から地域循環型のモノづくりへ。サステナビリティブランド「&ondo」には、地域への愛着と持続可能なものづくりの精神が息づいている>

日本企業のたとえ小さな取り組みであっても、メディアが広く伝えていけば、共感を生み、新たなアイデアにつながり、社会課題の解決に近づいていく──。そのような発信の場をつくることをミッションに、ニューズウィーク日本版が立ち上げた「SDGsアワード」は今年、3年目を迎えました。

私たちは今年も、日本企業によるSDGsの取り組みを積極的に情報発信していきます。

◇ ◇ ◇


地域の記憶を未来へ――桜を活かしたノベルティ開発

名古屋市で創業70年を迎えた株式会社近藤印刷は、印刷物の制作を中心に地域と歩んできた企業だ。近年は、印刷工程で培った加工・表現技術を活かし、地元企業とともに廃材を再利用した日用品やコラボグッズを開発するブランド「&ondo」を立ち上げた。その取り組みのひとつが、浅沼・岐建・宮本特定建設工事共同企業体と協働して制作した「さくらのしおり」である。

このプロジェクトのきっかけは、2024年7月。社員の一人が、近所の露橋公園の桜の木に赤いリボンが巻かれているのを見つけた。後日、代表取締役社長の近藤起久子氏が住民説明会の案内を受け取り、そこで伐採の予定を知る。工事の都合によるものだったが、長年花見を楽しんできた地域住民からは「なぜ切るのか」と感情的な声も上がったという。

「せめてこの桜を形として残せないか」。住民のひとりでもある近藤氏は、印刷会社としてできることを考えた。「伐採された桜を使ってノベルティを作りませんか」と提案し、地元と企業が連携する小さな再生プロジェクトが始まった。

当初は桜の木そのものでしおりを作る案も出たが、コストや数量の問題から、桜チップを染料として活用する方法を模索。試行錯誤の末、枝や幹からも淡いピンク色が抽出できることを確認し、染め紙のしおりづくりが始まった。5時間かけてチップを煮出し、紙を何度も裏返しながら均一に染め上げる。桜色の紙は反りやすく、乾燥や印刷にも細心の注意を要した。

仕上げには、箔押しを「空押し」と「シルバー箔」の2種類に分け、それぞれに異なるトーンのリボンを合わせることで、自然な濃淡を生かした。

露橋公園の桜のチップで染めた「さくらのしおり」

露橋公園の桜のチップで染めた「さくらのしおり」。失われた桜が、やさしい桜色として再び地域に息づく

完成したしおりは、地域と企業が連携して約3000枚を制作し、住民に届けられた。裏面にはQRコードを印字し、制作の経緯を紹介するページにリンク。単なる記念品ではなく、「どのように作られ、なぜ作られたのか」を伝える設計となっている。

近藤氏は語る。「SDGsやサステナビリティは『いい話』で終わらせてはいけない。きちんと利益を生みながら社会や環境に良いことをするのがベースだと思っています」

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米中央軍、オマーン湾とアラビア海での封鎖を通知 イ

ワールド

イスラエル国民はイラン停戦に反対、尊重するかで世論

ワールド

英仏、ホルムズ海峡巡り今週会合開催 防衛的海上任務

ビジネス

基本原則は債務残高のGDP比引き下げ、債務の定義で
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプの大誤算
特集:トランプの大誤算
2026年4月14日号(4/ 7発売)

国民向け演説は「フェイク」の繰り返し。泥沼化するイラン攻撃の出口は見えない

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【銘柄】イラン情勢で「任天堂」が急落 不確実な相場で人気の優良株から売られる落とし穴
  • 2
    停戦合意後もレバノン猛攻を続けるイスラエル、「国防軍は崩壊寸前」
  • 3
    新しいアメリカンドリームは「国外移住」...5人に1人が海外を希望する時代
  • 4
    日本は「イノベーションのやり方」を忘れた...ホンダ…
  • 5
    健康を守るはずのサプリが癌細胞を助ける? 思いがけ…
  • 6
    中国がイラン戦争一時停戦の裏で大笑い...一時停戦に…
  • 7
    【銘柄】イラン情勢で一躍脚光の「NEC」 防衛・宇宙…
  • 8
    「いい加減にして...」ケンダル・ジェンナーの「目の…
  • 9
    「仕事ができる人」になる、ただ1つの条件...「頑張…
  • 10
    古代のパピルスから新たに見つかった「2500年前の文…
  • 1
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 2
    古代のパピルスから新たに見つかった「2500年前の文章」...歴史を塗り替えかねない、その内容とは?
  • 3
    バリ島沖の要衝で「中国製水中ドローン」が回収される...潜水艦の重要ルートで一体何をしていた?
  • 4
    韓国、生理用品無償支給を7月から開始 靴の中敷きで…
  • 5
    「南東部と東部の前線で480平方キロ奪還」とウクライ…
  • 6
    「地獄を見る」のは米国か──イラン地上侵攻なら革命…
  • 7
    停戦合意後もレバノン猛攻を続けるイスラエル、「国…
  • 8
    撃墜された米国機から財布やID回収か、イラン側が拡…
  • 9
    ポケモンで遊ぶと脳に「専用の領域」ができる? ポ…
  • 10
    中国がイラン戦争一時停戦の裏で大笑い...一時停戦に…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 3
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 4
    古代のパピルスから新たに見つかった「2500年前の文…
  • 5
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 6
    バリ島沖の要衝で「中国製水中ドローン」が回収され…
  • 7
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 8
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 9
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公…
  • 10
    第6回大会を終えて曲がり角に来たWBC
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中