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ウイグル人権問題、中国に牛耳られる国連

2021年4月11日(日)18時53分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

ウイグル弾圧に抗議 トルコで抗議デモ Murad Sezer-REUTERS

日米首脳会談の共同声明でウイグル等の人権問題に関し「懸念」を盛り込むらしいが、国連が機能しなくなった今、民主主義国家が連携して行動するしかない。中谷元防衛相等が主張する「人権侵害制裁法」が不可欠だ。

中国に国連を牛耳られた民主主義国家の悲惨

国連の重要な決議機関が中国などの独裁国家によって牛耳られているため、人権を守るための決議を出すことができず、民主主義国家の意思が反映できない状況に陥っている。

たとえば、ミャンマー軍は4月9日、ヤンゴン在住の若者ら19人が先月の国軍記念日に発生した軍幹部の殺害などに関わったとして、死刑判決を受けたと発表した。これに対して軍と対立しているミャンマーの国連大使が、国連安保理の非公式会合に参加し、「ミャンマーの罪なき市民の命を救うには、安保理として一致した強い行動が今すぐ必要です」と訴えた。

しかし国連安保理には中国もいればロシアもいる。

まさに人権を弾圧している国家が絶対的な発言権と決定権を持っており、拒否権まで持っているのだ。国連として強い行動に出ることができない状況になっている。

アメリカはバイデン政権になってから、ようやく国際社会に戻ってくる動きを見せ始め、今年3月12日にアメリカは国連人権理事会の会合で、「中国政府による新疆ウイグル自治区の少数民族に対するジェノサイド(民族大量虐殺)やチベットへの弾圧」を批判した。

しかしアメリカはトランプ政権であった2018年6月19日に、国連人権理事会を離脱している。したがってブリンケン国務長官が2月24日に「アメリカは中国の人権問題を追及する方針である」というビデオメッセージを寄せはしたが、アメリカはこの段階ではまだ、あくまでもオブザーバーとしての発言に過ぎない。

それに比べて中国とロシアは昨年10月13日の国連総会において、国連人権理事会の理事国選挙で理事国に選ばれた。任期は3年間で、連続任期は2期に制限されている(新たな任期は2021年1月1日から始まっている)。

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