最新記事

歴史

新型コロナという「人類史上の厄災」を、どう未来に伝えるべきか

Archiving the Pandemic

2021年4月9日(金)18時53分
シェーナ・モンタナーリ
スペイン風邪

歴史家や作家はスペイン風邪の記録にコロナと向き合う手掛かりを求めた AKG-IMAGES/AFLO

<激動の記録を保存しようと全米でアーカイブが発足、日記や写真が市民から続々と寄せられている>

生活や思いをつづった日記、マスク姿の郵便配達員を描いた絵に、トイレットペーパーをかたどったバースデーケーキの写真。どれも人々がコロナ禍の象徴に選んだものだ。

「現在進行形のこの劇的な出来事を、どう記録し保存すればいいのか──。新型コロナウイルスの感染爆発が起きたとき、まず頭をよぎったのがこの疑問だった」と、インディアナ大学ブルーミントン校のサラ・ノット教授(歴史学)は振り返る。

ノットはアーキビスト(公文書館などで記録の収集、査定、保管を行う専門職)のキャリー・シュワイアーと組んでアーカイブを立ち上げ、地域住民と大学関係者に日記の提供を呼び掛けた。同様のプロジェクトは、全米で始まっている。

この1年、コロナ禍のみならず、BLM(ブラック・ライブズ・マター=黒人の命は大事)運動や大統領選で揺れに揺れたアメリカ。各地の大学や図書館、歴史協会は、こうした出来事に関する資料のアーカイブ化を進めてきた。資料とは、地域の人々から寄せられる写真や文章だ。

地域ごとのアーカイブ作りが盛んになったのは1960〜70年代だと、司書のスザーン・イムは解説する。

イムはロサンゼルス公共図書館で「LA・COVID-19・コミュニティー・アーカイブ」を運営。「昔は専門家が保存する資料を選定した。だが地域社会のアーカイブに関しては、アーキビストだけでなく提供者が資料を選ぶケースが増えている」と語る。

新型コロナのパンデミック(世界的大流行)が発生して以来、歴史家や作家は疫病に対する社会の反応を知ろうと、歴史にヒントを求めてきた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

午後3時のドルは154円後半、米雇用統計控え上値重

ワールド

インド総合PMI、12月は58.9に低下 10カ月

ビジネス

プライベートクレジット、来年デフォルト増加の恐れ=

ワールド

豪銃撃、容疑者は「イスラム国」から影響 事件前にフ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連疾患に挑む新アプローチ
  • 4
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 5
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 6
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 7
    アダルトコンテンツ制作の疑い...英女性がインドネシ…
  • 8
    「なぜ便器に?」62歳の女性が真夜中のトイレで見つ…
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    現役・東大院生! 中国出身の芸人「いぜん」は、なぜ…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 3
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の脅威」と明記
  • 4
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 7
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 8
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 9
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 10
    人手不足で広がり始めた、非正規から正規雇用へのキ…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中