最新記事

隕石

43万年前、直径100メートルの小惑星が大気圏に突入、隕石の空中爆発が起きていた

2021年4月7日(水)16時30分
松岡由希子

直径100メートル以上の小惑星が大気圏に突入したMark A. Garlick/markgarlick.com

<約43万年前、直径100メートル以上の小惑星が大気圏に突入していたことがわかった...... >

地球の上空で発生した隕石の空中爆発として、1908年6月にシベリアで発生した「ツングースカ大爆発」や2013年2月のロシア中南部チェリャビンスク州での隕石落下などが確認されているが、これらよりも甚大な影響をもたらしたとみられる隕石の空中爆発が、およそ43万年前、南極の上空で発生していたことが明らかとなった。

直径100メートル以上の小惑星が大気圏に突入した

英ケント大学、インペリアル・カレッジ・ロンドン(ICL)らの国際研究チームは、東南極セールロンダーネ山地ワルヌム山の頂上で採取した火成粒子17個の化学組成と酸素同位体組成を分析し、「約43万年前、直径100メートル以上の小惑星が大気圏に突入し、融解し、気化した隕石物質の噴流が、高速で地表に到達した」との研究論文を2021年3月31日、オープンアクセス科学ジャーナル「サイエンス・アドバンシス」で発表した。

研究論文の筆頭著者であるケント大学のマティアス・ファン=ヒネケン博士は、「隕石落下は、南極であれば人間の活動を脅かす可能性は低いが、人口密度の高い地域で発生すると、数百キロにわたって深刻な被害をもたらすおそれがある」と警鐘を鳴らしている。

研究チームがサンプルとして採取した小さな火成粒子は、黒く丸みを帯び、南極の氷床コア「ドームC」や「ドームフジ」で見つかった小球体と似ていたことから、いずれも43万年前の小惑星衝突で生成されたものと考えられる。

spherules.jpgScott Peterson/micro-meteorites.com

電子顕微鏡で観察し、地球外物質であることがわかる

研究チームが電子顕微鏡で観察したところ、これらの粒子は、ニッケルを多く含むかんらん石と鉄を主成分とし、ガラスも少し含まれていた。このことから、地球外物質であることがわかる。また、粒子の酸素同位体組成を分析した結果、低温環境で低濃度となる「酸素同位体18」が低かった。つまりこれは、気化した隕石物質の噴流が南極氷床からの酸素と相互作用し、これらの粒子が生成されたことを示している。

ファン=ヒネケン博士は、一連の研究成果をふまえ、「地球の小惑星衝突の記録を完成させるためには、今後、岩の多い地や浅い海底基盤などでも、同様の研究をすすめるべきだ」とし、「我々が今回用いた手法は、海底コアでも応用できるだろう」と述べている。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

日中双方と協力可能、バランス取る必要=米国務長官

ビジネス

マスク氏のテスラ巨額報酬復活、デラウェア州最高裁が

ワールド

米、シリアでIS拠点に大規模空爆 米兵士殺害に報復

ワールド

エプスタイン文書公開、クリントン元大統領の写真など
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦い」...ドラマ化に漕ぎ着けるための「2つの秘策」とは?
  • 2
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリーズが直面した「思いがけない批判」とは?
  • 3
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 4
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 5
    「何度でも見ちゃう...」ビリー・アイリッシュ、自身…
  • 6
    70%の大学生が「孤独」、問題は高齢者より深刻...物…
  • 7
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 8
    中国最強空母「福建」の台湾海峡通過は、第一列島線…
  • 9
    ロシア、北朝鮮兵への報酬「不払い」疑惑...金正恩が…
  • 10
    ウクライナ軍ドローン、クリミアのロシア空軍基地に…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 9
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 10
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 8
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中