最新記事

BOOKS

「息子は若く見えるし、若い女性なら孫を2人は産めるから」代理婚活に励む親たち

2021年4月23日(金)15時20分
印南敦史(作家、書評家)
『ルポ 婚難の時代』

Newsweek Japan

<結婚が難しいものになったとする『ルポ 婚難の時代』。その中で気になるのは、独身の子に代わって嫁・婿探しをする「昭和の価値観」むき出しの親の姿だ>


 50歳まで一度も結婚をしたことのない人の割合を示す「生涯未婚率」という言葉を聞いたことがある人も多いだろう。厚生労働省の国立社会保障・人口問題研究所の調査によると、2015年には男性23.37%、女性14.06%だった。生涯未婚の人は男性のほぼ4人に1人、女性のほぼ7人に1人となり「結婚離れ」が鮮明になっている。政府は「生涯未婚率」という言葉は「50歳を過ぎるとずっと未婚」という印象を与え、正確性を欠くとして使用をやめたが、本書では便宜的にそのまま使うこととする。(46ページより)

上記の文章の「政府は『生涯未婚率』という言葉は~」以降の部分、すなわち「ずっと未婚という印象を与えるから使用すべきでない」という考え方は、皮肉にも生涯未婚率の高さを逆説的に浮かび上がらせている。

ともあれ、『ルポ 婚難の時代――悩む親、母になりたい娘、夢見るシニア』(筋野茜、尾原佐和子、井上詞子・著、光文社新書)は、この問題を扱ったものである。

3人の著者は、少子高齢化や社会保障の問題を手がける共同通信生活報道部の取材班(当時)。2017年4月から1年3カ月間にわたって加盟新聞社に配信された「婚難の中で」という連載をベースとして、結婚、未婚をめぐる実情をさらに掘り下げた一冊だ。

第一章でまず明らかにされるのは、婚活の現場でピックアップした当事者の言葉を主軸とした、独身男女の実情である。


 ①同年代②年収500万円以上③趣味が合う④見た目が好み――という条件で60人に交際を申し込んだものの、お見合いに進めたのは一人だけ。条件のいい男性は20〜30代の女性を希望していた。相手からオファーがきたのは、かなり年上か年収の低い人ばかりだった。
「もしかしたらご縁があるかもしれない」と何人かとはホテルのラウンジで会った。しかし、会話が盛り上がらず、苦痛しか感じない。周りを見渡すと、お見合い中の20~30代の男女が楽しそうに話していた。
「私、何やっているんだろう」
 失意のまま結婚相談所を退会した。(33ページより)

これは、10年前から中堅企業の社長秘書をしていたという女性のケース。記者が初めて会った時は40歳だったそうだ。

もともと結婚願望が強く、20代のうちに寿退社をし、両親に三つ指をついて嫁ぐ自分の姿を思い描いていたという。しかし「好きな人とは自然に出会いたい」と思い婚活に力を入れずにいるうちに、時間だけが過ぎていった。

そして結婚相手が見つからないまま、理想の男性である父親を東日本大震災で失い、亡骸を前に自分を責めた。

確かにやるせない話だが、問題は彼女だけが特別ではないということだ。

もちろん、全てが悲惨な話というわけではない。だが本書に登場する男女は、多かれ少なかれ困難な状況を抱えている。つまり本書は、結婚相手を探すことの難しさを浮き彫りにしてもいる。

それらは、私の身近にいる独身者の言葉とも符合する。なぜなら、彼ら、彼女らの口から何度も「結婚相手と出会う機会がない」と聞いてきたからだ。全員が20~30代の社会人である。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

サウジ外相「軍事行動取る権利留保」、イランの攻撃受

ワールド

米中間選挙に外国干渉の脅威なし=国家情報長官

ワールド

米WTI、対ブレントでディスカウント幅拡大 米輸出

ワールド

ベネズエラ暫定大統領が国防相解任、マドゥロ氏の腹心
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:イラン革命防衛隊
特集:イラン革命防衛隊
2026年3月24日号(3/17発売)

イスラム神権国家を裏からコントロールする謎の軍隊の歴史と知られざる実力

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期スペイン女王は空軍で訓練中、問われる「軍を知る君主」
  • 2
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が発生し既に死者も、感染源は「ナイトクラブ」
  • 3
    第6回大会を終えて曲がり角に来たWBC
  • 4
    【衛星画像】イラン情勢緊迫、米強襲揚陸艦「トリポ…
  • 5
    モジタバの最高指導者就任は国民への「最大の侮辱」.…
  • 6
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する…
  • 7
    ガソリン価格はどこまで上がるのか? 専門家が語る…
  • 8
    韓国製ミサイル天弓-II、イラン戦争で96%迎撃の衝撃 …
  • 9
    観客が撮影...ティモシー・シャラメが「アカデミー賞…
  • 10
    原油高騰よりも米国経済・米株市場の行方を左右する…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期スペイン女王は空軍で訓練中、問われる「軍を知る君主」
  • 3
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が発生し既に死者も、感染源は「ナイトクラブ」
  • 4
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 5
    職業別の収入に大変動......タクシー運転手・自動車…
  • 6
    ズボンを穿き忘れてる! 米セレブ、下を穿かず「目の…
  • 7
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 8
    第6回大会を終えて曲がり角に来たWBC
  • 9
    世界の視線は中東から日本へ...企業主導で築くインド…
  • 10
    【衛星画像】イラン情勢緊迫、米強襲揚陸艦「トリポ…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 5
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 6
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 7
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 8
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 9
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 10
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中